こんにちは人事の夏沢です!
人事にまつわる様々なことを書かせていただいておりまして、時に人事の本音、時に人事の舞台裏、時に給料や出世のポイントなどについて、企業人事ならではの視点でブログを書いております。
就活、転職、給与、労務などはそれぞれカテゴリーを設けておりますのでぜひご覧ください。
【筆者について】企業での人事部門を10年以上経験しています。
採用、研修、評価、給与、社保など人事系の実務は網羅。
人事についての経験は僭越ながら豊富でありますよ。
制度設計や企業合併の実務も経験しています。
さて、今回は「厚生年金の折半や義務って?損得やポイントを人事が解説」についてです!!
いやぁ、題材が地味。でも、社会保険って人事の大切な業務ですよ。
人事の業務は採用とか、人事制度とか、人事評価とか、人材育成とかそんなイメージしやすい業務が目立ちますが、人事に携わる人で社会保険のことや給与とか労務管理が分かっていない場合、それは人事ではなくてただの採用とか、研修という限られた範囲の担当者です。社会保険が分からずに人件費は語れませんし、人件費が語れなくては人事制度は構築できません。
「人事」という枠の中には多様な事柄が含まれます。社会保険というと大変地味で小難しくて、面白みがなさそうなイメージだと思いますが大切な人事の業務なので今回はそんな観点で厚生年金を記事にしてみます。
読み物としては実に地味!でもそれが企業人事のリアル。
地味かもしれませんが役に立つ情報ですよ。
厚生年金制度の詳細ではなく、加入による損得とかを書いてみる
人事の業務は採用や人事異動や人事評価、研修などがイメージしやすいと思いますが今回は社会保険、特に厚生年金について。
人事と言ってもそのなかでさらに組織や担当が分かれているケースがほとんどです。社会保険については、人事部門の中でも厚生や労務といったことを担当している組織の業務になっている場合が多いと思います。
このブログは、法令や制度についての詳細や根拠を解説する目的ではなく、人事の担当者目線で本音や現実を書いていくこととしていますので、本稿では社会保険のうち代表的な厚生年金について人事部門の現場視点で書いてみます。
厚生年金と聞いて「よく分からないな」とか「複雑そうだな」と感じる方も多いと思います。
無理もありません。複雑です。
今回は、その複雑な厚生年金のうちいくつかのポイントに絞って書いてみます。厚生年金制度そのものではなく、多くの人が知りたいと思っているであろう加入による損得あたりを中心に書いてみます。
厚生年金を3つのポイントで解説
まず、このあと触れていくポイントとして3つ挙げます。
厚生年金のポイント
①厚生年金は会社員のための年金制度
②加入未加入は任意ではなく要件を満たせばみんな加入
③厚生年金の損得
①厚生年金は会社員のための年金制度
厚生年金保険は、国民年金に上乗せされて給付される年金で、基礎年金と言われる国民年金部分に、厚生年金が加算されます。
厚生年金保険の対象者は被用者(雇用されている人)です。20歳以上60歳未満の全ての国民が加入する国民年金に加えて会社員が加入することになる年金制度なのです。
②加入未加入は任意ではなく要件を満たせばみんな加入
厚生年金は加入対象範囲というものがあり、基本的には正社員をはじめとした常用雇用といわれる社員はみんな対象です。
また、常用雇用でなくても週の所定労働時間や収入、企業の従業員数などの複数条件を満たすと加入対象となります。
加入対象となる場合、任意の加入ではなく強制的に加入です。入りたいから加入しますとか、入りたくないから加入しませんというご自身での選択肢はありません。
加入の手続き自体は個人で行う必要はなく、企業の人事や厚生担当
③厚生年金の損得
今回の記事で最もお伝えしたいのはここです。
前述のように対象者は強制加入となる厚生年金ですが、この制度の特徴を挙げると、
厚生年金の特徴
厚生年金保険料(以下、保険料)は、給与により異なる
保険料を多く納めた方が受給額も多くなる(報酬比例部分)
保険料は、企業と社員で折半(つまり半分は企業が出してくれる)
受給額は国民年金部分(老齢基礎年金)と厚生年金(老齢厚生年金)の2階建て
ひとつずつ補足していきます。
まずは、「保険料が給与による異なる」についてです。
給与が多い人の方が保険料が高くなるので給与や賞与から天引きされる金額が大きいですということです。
保険料は毎月変わる訳ではなく、定時改定(年に1回)と随時改定(固定給の変動による)という算定の仕方により変動します。
保険料の改定にはテクニック的なこともたくさんありますが、別の記事で書きたいと思いますので本記事ではそこには触れません。
続いて、
「保険料を多く納めた方が受給額も多くなる」についてです。
厚生年金には基礎年金部分以外に報酬比例部分というものがあり、高い報酬=高い保険料となりますが、それが結果的に年金の給付額にも影響することになります。
つまり高い保険料を納めていた人の方が将来受給する年金も少し高いということです。ちなみに国民年金は納付した期間が同じなら受給額も同じです。ですから高い給与の人が高い厚生年金保険料を払っていると何か損な気持ちもあるかと思いますが、年金受給額に影響すると思えば多少の納得性も出てくるのではないでしょうか。
続いて、
「保険料は、企業と社員で折半」についてです。
厚生年金保険料が給与や賞与から天引きされると何か損した気持ちになりますが、実は給与明細では見えない部分で「事業主負担」というものがあり、社員が個人で負担している金額と同じだけ、事業主つまり会社が保険料を負担しています。
つまり、みなさんの支払っている倍額が実はみなさんの毎月の厚生年金保険料として納付されているのです。これにより個人の負担だけの国民年金と比較すると大きな金額の年金受給が可能となるのです。
続いて、
「受給額は国民年金部分と厚生年金の2階建て」についてです。
先程説明したとおり厚生年金は、老齢基礎年金(国民年金相当)と老齢厚生年金という構成なので、よく1階部分が国民年金、2階部分が厚生年金という例え方がされます。
単純に表現するならば、国民年金に比べ倍以上の威力があるのが厚生年金なのです。
共働きで夫婦二人とも会社員で厚生年金加入期間が長期であれば将来困らないとまでは言いませんが、年金受給額はなかなかのものになります。会社員としての共働き世帯の強さは、現役の時のダブルインカムもそうですが、実は将来の年金受給においても大いに収入に影響を及ぼすことになります。
厚生年金保険料を下げるテクニックはある。でも真正面からの納付するのが吉
厚生年金保険料は、個人負担と事業主負担があることから、これを抑制することは、個人にとっては給与の手取りが増えて嬉しい、事業主にとっては人件費を抑えられて嬉しいということで様々なテクニックがあります。
例えば、確定拠出年金の導入により社会保険対象額を縮減するとか、給与と賞与の構成比のうち賞与を標準賞与額の上限以上にして例月給与を低く設定することで年収に占める社会保険料を少なくするとか。制度上のルールに違反することなく社会保険料(標準報酬)を下げるテクニックはいくつもあります。
しかし、前述のように厚生年金はしっかり払っておけば、将来の年金額も多少なりとも増えますし、一概に今納める保険料が低ければ得というものでもないです。
策を講じずに自分の正味の待遇どおりに保険料をしっかり払い続けることがまずは間違いないと思います。
確定拠出で攻める!などのやり方については別の機会に。
今回の記事が厚生年金の全体像をイメージしていただくための一助になれば嬉しいと思います。
企業人事の業務において給与や社会保険、労務管理はとても重要です。ついつい採用や人材育成がイメージされやすい人事の仕事ですが、給与や社会保険の実務が分からずして人件費は理解できません。人件費が理解できないと人事制度は構築できません。
企業人事の本音がこのブログの本旨です。ちょっと内容が地味でしたがこれも企業人事のリアルということで。
ご参考になれば嬉しいです。