こんにちは人事の夏沢です!
人事にまつわる様々なことを書かせていただいておりまして、人事の本音、人事の舞台裏、給料や出世のポイントなどについて長年にわたる企業人事の経験という観点でブログを書いております。
さて、今回は「健康保険の損得」について。
人事の仕事と言えば、採用や能力開発のための研修、人事制度などが中心と思われがちですが、広義の意味では厚生も人事の仕事です。今回は、企業人事の視点で健康保険について、特に損得の部分に触れてみたいと思います。
健康保険って実は加入している健保によっていろいろ違うのですよ。
厚生も人事の代表業務
人事の業務は採用や人事異動や人事評価、研修などがイメージしやすいと思いますが、厚生という分野も広義の意味では人事の業務です。
厚生とは
体を健やかに保つこと ⇒ 健康
生活を豊かにすること ⇒ 福祉
厚生労働省、厚生年金、福利厚生というと馴染みがあるかもしれません。
ちなみに社会保険のうち厚生年金については、以前記事にしておりますのでご参考に↓
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厚生年金の折半や義務って?損得やポイントを人事が解説
厚生年金制度のうち、多くの人が知りたいと思っているであろう加入による損得。厚生年金保険料が給与や賞与から天引きされると何か損した気持ちになりますが、
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まず、簡単に健康保険そのものの説明をいたしますと国民皆保険といわれる制度のもと国民がなんらかの形で加入しているのが健康保険です。代表的なものとして国民健康保険があり、その他に加入者の職種などでいくつかの種類に別れます。
保険の種類だけでも複数あるのですが、企業人事の目線で様々な本音や現実を書いてるこのブログでは、一般的な会社員が加入する健康保険について書いてみたいと思います。
健康保険の損得について
一般的な会社員にとっての健康保険は「組合けんぽ」と「協会けんぽ」に分かれています。
大企業やグループを形成している企業では、独自の健康保険組合を設立していることが多く、各健康保険組合がそれぞれ運営しています。加入出来るのは、その企業の社員やグループ企業の社員です。
中小企業で働く会社員の方は、全国健康保険協会の運営する協会けんぽに加入することが一般的です。協会けんぽでは各都道府県に支部が設けられ、申請や届出の受け付け等を行っています。
さて、ここからが今回の記事のポイント。
健康保険の仕組みや制度を細かく説明するのではなく、多くの方が気になるであろう健康保険に関わる損得について触れてみたいと思います。ポイントは以下のとおりです。
健康保険の損得
国民健康保険と会社員の健康保険はどちらが得か
企業ごとに健康保険の内容に差(損得)があるのか
保険料に関する色々
国民健康保険と会社員の健康保険ではどっちが得か?
まず「国民健康保険と会社員の健康保険はどちらが得か」についてです。
結論は会社員の健康保険です。
理由の1つ目は、国民健康保険の保険料は個人が全額負担するのに対して、会社員の健康保険は個人と事業主(会社)の折半で負担するため、国民健康保険と会社員の健康保険では、保険料の算出方法が異なるものの会社員の健康保険の方が低い金額になる場合が多いからです。
また、国民健康保険には扶養制度がないため、ご家族に扶養者がいる場合は、その一人ひとりに保険料が発生する、つまりご家族が多ければ多いほど1世帯の保険料総額が高くなるのに対し、会社員の健康保険は扶養制度があるため保険料は被保険者(会社員本人)分だけで、被扶養者(ご家族等)分の保険料は掛かりません。
では、被扶養者(ご家族等)の分は誰が負担しているのかと言うと被保険者全体です。加入員全体とその半分の保険料を負担する事業主全体で負担している訳ですね。
健康保険は企業ごとに差があるのか?
続いて「企業ごとに健康保険の内容に差(損得)があるのか」についてです。
結論は差(損得)はあります。
特に大企業が設立している独自の健康保険組合の場合、その健保組合が行う保険事業は健保組合ごとに異なります。財政が潤沢な健保組合であれば充実した内容の保険事業が提供されている場合もあります。
例えば、次のような内容が健保組合負担で享受出来たりします。
健保組合の保険事業例
人間ドックの受診
婦人科検診の受診
インフルエンザ等の予防接種費用
オプション検査(脳検査とかピロリ菌検査とか色々あります)
メンタルヘルス対策
保養施設の利用
中には他社がうらやむような保険事業がある健保組合もあり、さらに協会けんぽよりも保険料が低かったりするので先程申し上げたとおり企業ごとに健康保険の内容に損得がある訳なのです。
健康保険料に関わる損得
続いて、「保険料に関する色々」です。
ここでも健康保険料に関わる損得という視点で書いてみたいと思います。
会社員の健康保険の保険料は、個人の給与により異なります。健康保険の資格取得時にまず最初の保険料が決まります(実際に決まるのは標準報酬月額ですが、ここに保険料率を掛けた額が保険料です)。
その後、固定給に変動があり、以後3カ月を平均して一定以上報酬が上がったと判断される場合に保険料改定、また、固定給に変動がなくても一年に一回の見直しのタイミング(定時改定)があったりします。
ここで保険料に関していくつかポイントを挙げると、月々の健康保険料は安い方が好まれますが、健康保険から給付される様々な給付金は保険料が高い人程受給する額も大きくなります。給付金は、病気療養中の保障としての傷病手当金や産休中の保障としての出産手当金あたりがわかりやすいと思いますが、これら給付金の受給額は普段保険料を多く収めている人(標準報酬が高い人)の方が高くなるということなんですね。
つまり、一概に健康保険料が安い人程お得とは言えない部分もあるんですね。
そしてこの保険料を決める標準報酬月額(つまり報酬額の平均)は、厚生年金の標準報酬月額と同じ仕組み(等級数等は異なる)なので、保険料を意識的に圧縮すると月々の保険料は低くなるものの、厚生年金の報酬比例部分が低くなったり、健康保険の給付額が少なくなったりという影響がある訳です。
それでも保険料をとにかく低く抑えたいという場合は、標準報酬月額をなるべく低くしていくためのテクニックなどはありますが、今回の記事では触れません。
ホワイト企業ならぬホワイト健康保険
健康保険については加入する健保組合ごとに保険事業が異なるため、転職する際などに気にしてみるといいかもしれません。給与以外に実は健康保険の保険事業が凄く充実してたなんていうことがあるかもしれません。逆に大企業からスタートアップ企業に転職する様な場合、保険事業の内容はほぼ間違いなく充実度が下がるということになります。
就職や転職で健康保険の保険事業まで比較するケースはないと思いますが、だからこそ蓋を開けてみると実は結構差があるな、という分野だったりします。健康保険というと怪我や病気の際の備えという認識の方も多いと思いますが、実は人間ドックや予防接種など年中行事的なものでも内容の充実度に差がありますし、優良な健保組合に加入しているのは言わばそれだけで間接的な好待遇の享受と同意義とも言えます。
みなさんの加入する健康保険が、実は充実していて良い内容だったのか、逆に最小限の内容だったのか、そのような切り口で見てみると給料以外の観点でご自身の処遇の納得感や会社のホワイト企業度が計れる部分があると思います。優良な内容の健康保険は、ホワイト企業ならぬホワイト健康保険といっても過言ではないくらい充実していたりしますから転職や就活の企業選びの際の一つの尺度に加えてみてはいかがでしょうか。