こんにちは人事の夏沢です!
企業人事の本音と現実をテーマとしています。
人事にまつわる様々なことを書かせていただいている現職の人事部門マネージャーです。
【筆者について】企業での人事部門を10年以上経験しています。
採用、研修、評価、給与、社保など人事系の実務は網羅しておりまして、僭越ながら人事についての経験は豊富であります。
制度設計や企業合併でも人事の実務を経験しています。
今回は、「有休消化義務化」について。
「義務化」といわれると強制力を持っているようであまりイメージがよくない気がしませんか?
ところが今回は有給休暇の取得義務化です。つまり、有給休暇を絶対取得してくださいよということ。
いやぁいい時代になりましたね。だって、有給を取得することが義務になったんですよ。
しかし、この有給取得義務化にも企業人事の視点からは本音と現実があります。今回はそんなお話です。
有給消化義務化は、年10日以上付与した社員が年5日以上取得するということ
年次有給休暇(以下、有給)は、企業の規模、経営方針、もっと言えば社内の雰囲気や慣習により消化率が異なるものです。
人事の視点から見た有給の全部消化については、別記事【有給休暇を全部消化するのは常識といえる時代になったのか】をご参照いただきまして、今回は労基法改正により2019年度から義務化された年5日以上の有給消化について企業人事の本音や現実を書いてみたいと思います。
まず、この有給消化義務化の内容にサラッと触れます。
働き方改革法案の成立により労働基準法が改正され、年10日以上有給付与がある社員は、年5日以上の有給を取得することが義務化されました。
もし年5日未満の消化であれば企業側が有給の日を指定して有給を取得させる必要があります。
もちろん細かいルールがありますが、法そのものの詳細は厚労省ページや他サイトをご参照いただくとしまして、本ブログではあくまでも人事という立場からこの制度の本音や現実を書いて行きます。
有給取得義務化の罰則とは
有給5日消化の義務化は履行できなかった場合、罰則があります。
この罰則は、有給を消化しきれなかった社員に対しての罰則ではなく事業主つまり企業に対しての罰則となっており30万円の罰金を処すという内容になっています。
社員側に罰則がないなら別に気にしなくてもいいやと思う方もおられるかもしれませんが、この有給消化義務化に対応するために企業側は就業規則等に「年10日以上有給付与がある社員は、年5日以上は有給を取得すること」という内容を規定したはずです。
つまりこれに従わなければ社員側も就業規則違反ということで企業側は社員に対して注意や処分を行うことが出来ます(本当にやるかは別として)。
つまり、企業も社員もとりあえず有給消化義務化にはしっかり対応しておくというのが基本スタンスです。
しかし、有給を一定数消化しなければならないという法律が出来るとは、恵まれた世の中になったものです。
その昔は、企業によっては有給なんて使わなくてあたり前という環境も珍しくはなかったはずです。
義務化されているのは年5日とはいえ、通常の公休日や祝日に加えて確実に5日休めるのは悪い話ではないです。
有給取得義務化に対応しない社員がいたらどうする?
さて、人事としての有給消化義務化について困るパターンは義務を履行しない社員が出ることです。
社員数が千名以上の規模になるとこの手の制度等に従わない社員が一人くらいは出てくる可能性があります。
いわゆるどこの企業にもいる
悪くいえば迷惑社員
良くいえば名物社員
という人です。ついつい会社側に何か文句を付けたかったり、とにかく言われたことに「はい」と返事をしたことがないという社員がいるんですね。
こういう社員とはこの有給消化義務化に関わらず常に規則に従わせることが出来るかの戦いです。
この有給消化義務化については、年5日に満たない場合は会社が時季を指定して有給取得させることが出来ますから有給取得日を指定してしまうしかないのですが、一方的に決めるのではなく、本人と相談の上、穏便に時季(つまり取得する日にち)を指定するという進め方になります。
それでも従わない、時季指定した有給取得日に出社してしまうなどの強行手段を取るようなケースにいたれば就業規則違反という枠組みの中でしかるべき対応をするしかありません。
そこまでして有給を5日消化しないという社員は間違いなく少数派ですし、ほとんどの社員は通常に有給消化をしていけば5日程度にはなるものと思います。
人事としてはとにかく年度の途中で社員の有給消化実績を把握し、取得数が少ない社員には個別対応(つまり有給取ってねというお願い)をしていく。
年度末が近づいてきた折に5日消化に満たない社員をあらためて把握し、しっかり消化してもらうための依頼をしていく。
最後まで応じなければ罰則を受けるのは企業、でも義務を履行しなかった本人だってただでは済みませんよということになります。
「有給を取得したらダメ」ではなく「有給取得が少な過ぎたらダメ」という訳ですから、大多数の社員は何もいわずともクリアしますが、この義務に応じない社員はいわば要チェック社員でありまして、この手の社員は他の制度や社内の決め事に「はい」と応じることがない社員である可能性が高いと思います。
有給消化義務化の履行は誰との戦いか
つまり、この有給取得5日義務化については、へそ曲がり社員との戦いです。
会社側が「お願いですから休んで下さい」と言っているのに1年間ある中で5日の有給を計画的に消化できないのならもはや計画性の欠如とも言えます。
そういう訳でこの義務の履行は、企業も社員もしっかり意識して対応出来れば難易度は高くないはずですが、逆にこれに応じない社員が出てきた場合は、一筋縄では行かない社員である可能性が高いのでその個別対応の難易度は高いかなと思います。
義務を履行しない社員が思ったよりも多い場合は、別記事【社員の懲罰】もご参照いただき、そういう社員との付き合い方を会社として決めていく必要があります。
36協定違反なんかもそれに近い感覚ですが、それはまた別の機会にて。
今回はこんなところで。