こんにちは人事の夏沢です!
人事にまつわる様々なことを書かせていただいておりまして、人事の本音、人事の舞台裏、給料や出世のポイントなどについて長年にわたる企業人事の経験という観点でブログを書いております。
人事の担当業務の一つとして労務管理があります。
今回は労務管理において最も身近であり申請する機会も多いであろう「残業」についてを企業人事の視点で書いてみたいと思います。
残業そのものの定義や法定ルールは様々なサイトで解説されておりますので、本ブログでは「残業」を切り口に企業人事の本音を書いていきます。
残業は誰にとっても身近な存在
記事の冒頭ということで最小限「残業」の説明だけしておきます。
残業は、所定労働時間を超える労働時間のことです。呼び方は、残業以外に超過勤務、超勤、所定外労働などがあります(所定労働時間が8時間の場合、法定外労働と所定外労働を同意義で呼んでいる企業もあるかもしれません)。この記事の中では「残業」としておきたいと思います。
さて、残業は以前に比べて減る傾向にありますが、全くしたことがないという会社員はいないのではないでしょうか。逆にほぼ毎日残業ですという人はいるのではないでしょうか。
つまり、減っているとはいえ会社員にとってはやはり日常的に付き合わねばならない勤務上の実態な訳です。
残業発生の正論と本音
残業は、どんな時に発生するでしょうか。最初に正論としての理由を挙げてみます。
残業発生理由【正論編】
担当業務の量が多くて終わらない
担当業務の質的に時間が掛かる
突発的な業務が発生して対応しなければならない
これらの理由で残業が発生している場合、本人はつらさを感じながらやっているはずです。
「業務量が多すぎる・・・」
「この資料作成は自分にはレベルが高すぎる・・・」
「急にそんなこと言われても・・・」
みたいなパターンです。
これが慢性的になると体調を崩したり、ストレスでメンタルを病んだりします。
このあたりは先程触れたとおり正論であって誰にでもどの企業でも発生し得る残業パターンです。
一方、残業にも本音やリアルがあります。
つまり、正論以外の理由により残業が発生するパターンです。本音パターンの理由を挙げてみます。
残業発生理由【本音編】
残業代を稼ぎたい
切りのいいところまで業務を進めたいから残業しよう
急げば所定時間内に終わるけどマイペースでやりたいから残業になってもいいや
業務の都合ではなく、帰りの電車時間を考慮して自分が会社を出たい時間までは残業しておく。残業代もらえるし、時間が無駄にならなくてお得
業務の都合ではなく、私用(飲み会、デート等)の時間を考慮して自分が会社を出たい時間までは残業しておく。残業代もらえるし、時間が無駄にならなくてお得
ネットを見ながら業務をしているうちについ遅くなっちゃう
などのパターンです。
誰にでもたまにはあるのではないでしょうか。
人によっては戦略的にほぼ毎日そうしている場合もあるかもしれません。
残業している=頑張っているという認識が古い時代
残業にも本音と建前がある訳なのですが、いずれにしても残業そのものの考え方や見方が昔とは異なって来ています。具体的にどのような所が異なって来ているかというと、
・業務の遂行が遅いから残業が発生すると判断される
・いつも残業しているのは業務適性がないからだと判断される
・残業が発生するのは管理監督者の管理不足と判断される
これにより、前述した本音パターンでの残業申請はしづらくなります。
残業代を稼ぎたいから会社に残って働いている(または働いているフリをしている)という作戦が、業務適性なしとみなされたり、業務が遅いとみなされて評価が下がったりしたら短期的に残業代を稼げても中長期では損をみるということになりかねません。
評価や適性なんかは気にしないで割り切って働いているという人は影響がないと思いますが、その企業でずっとまたは長く働こうと思っている人は、残業することで大きなマイナスイメージが生じるのは避けたい所です。
残業についての人事の本音
ここからは、残業についての人事の本音や裏話についてです。
人事は社員の勤怠もチェックしています。
労務管理といわれる分野です。
様々な項目をチェックしますが、やはり残業はチェック項目の中心です。これは業務適性の有無とかスピードの早い遅いをチェックする目的ではなく、まずは労基法に違反していないかの確認です。
過労死ラインと言われる過重労働は、企業としても避けなければ様々なリスクを負います。そういう意味でも残業が過度に多かったり、毎月恒常化している社員は人事として目を付けざるを得ません。
人事の労働管理担当からすれば残業ゼロとはいわずとも最低限の時間である方が、労基法上も社内規定上も安全圏な訳ですから望ましい訳です。
そういう訳で単純に忙しかったり、プライベートよりも業務を優先しているような場合でも人事の担当によっては「残業多い=ダメ」と短絡的に判断してしまう人もいます。
人事を長く担当してきた筆者の個人的な意見としては残業はバランスです。
全社員が残業ゼロというのは不自然であり、現実的になかなかないと思います。
若手の社員で役職手当などがなく基本給も高くない場合、戦略的に残業代で稼ぎたいというのも正直理解できます。
また、昼間から一切横目を振らず、業務に集中しまくって毎日所定時間内に業務を片付けるというのも、人によっては出来るかもしれませんが全社員が行うのは無理です。
つまり、様々な現実の中に清濁混合、いい残業と悪い残業が併存しており、その「いい、悪い」は会社の方針や人事の労務管理担当の考え方次第という部分があります。
残業申請のテクニック
残業申請にはバランスとテクニックが必要で、会社に目を付けられない程度に、しかし自分が納得出来る程度の残業代も考慮しながら、年間残業時間を考えながら毎月申請していくのがいいと思います。
毎月多いではなく、多い月と少ない月の緩急、社内規定を超えないラインでの申請、残業上限ラインは、月と年間で規定されているはずなので、その上限を意識しつつ月単位でも年単位でも絶対に上限ラインを超えない、これであれば人事はなかなか文句を付けられません。これに加えてダラダラやっているのではなく、一生懸命やってる感が大切です。
残業=全部悪と考えていたり、本当に正論の残業しか認めないというのは、会社員の現実とは解離していると思います。
労務管理を担う人事らしからぬ内容を書いていますが、やっぱり綺麗ごとだけで組織が動いている訳はありませんし、生活のために会社員をしている人がほとんどであるのが現実です。
「残業」について人事としての理想論は語ることが出来るのですが、組織は大きくても小さくても理想どおりには動きません。残業にも本音と現実がある訳なのです。
まとめ
本稿でお伝えしたいのは、残業には本音と建前があり、残業時間を申請する人と承認する人では立場が異なるもののある程度の時間数まではお互い許容しつつ、ただし、36協定違反や法定上限を超える時間数は絶対にダメということです。
残業への考え方や要否については、会社ごとに方針が異なります。昨今では、働き方改革やワークライフバランスといった観点から残業を極力発生させないという方針の環境が増えている様ですが、一方、コロナ禍で導入が加速したテレワーク勤務においては残業の取り扱いが新たな課題として顕在化した会社もあるのではないかと思います。
人が決められた時間内で働く限り、そこには残業が付き物ですから会社員の方も労務管理担当の人事も残業とはこれからも上手く付き合っていかねばなりません。そういう訳で企業人事から見た残業の現実について書いてみました。ちなみにサービス残業は会社にとっても社員にとってもやってはダメですよ。