こんにちは人事の夏沢です!
企業人事が本音と現実を書くことを本旨としている当ブログですが、今回は転職を急いだ方がいい場合について書いて参ります。
筆者は企業人事として採用や人材育成、人事制度の構築など総合的に実務を行ってきた叩き上げの人事です。僭越ですが人事の現場については詳しいですよ。
つい綺麗ごとや理想論が語られやすい人事界隈なのですが、実務からの叩き上げの現役人事管理職の視点で様々な本音と現実を書いております。
今回の記事は、転職の時期の中でも「転職を急いだ方がいい場合もある」という内容です。転職をするには最適な時期、つまりタイミングが大切で時期ごとに説明した記事も書かせていただいているのですが、今回はじっくり時期を計るのではなく、一定の条件下では急いだ方がいいという場合もあるのでそのあたりについて。
現在転職を考えている方、今後転職するかもしれない方の役に立つ情報ですのでぜひご参考にして下さい。
転職しようかなという理由や思いは身近にある
本ブログでは企業における組織や人事制度、給料や労務について企業人事の筆者が実務の観点から書くことを本旨としておりますが、人事の業務の中で人材の確保とは逆の方向、つまり、社員の退職にどう向き合うか、どう取り組むかということも人事の大切な業務です。
会社員の方は、男性でも女性でもほとんどの方が多少なりとも転職について考えたことがあるのではないかと思います。それはつまり現職を退職しようかなという考えが頭をよぎったということと同意義です。
実際に会社を退職したかどうかは別としまして、日々様々な業務に取り組んでいる上で、誰にでも仕事上の嫌な経験があるはずで、そんな経験をした直後にはつい「転職」や「退職」というキーワードがちらつく場合が誰にでもありますよね。
嫌な経験というといささか稚拙な表現ですが、例えば会社員に起こりやすいのはこんなことです。
会社員によくある嫌な経験
自分のミスではないのに怒られる
上司の指示がころころ変わる
上司や同僚から仕事を丸投げされる
同僚に手柄を横取りされる
成果が認められない
少し挙げただけでも心当たりがある方は多いのではないでしょうか。
これらのことはある意味どのような環境であっても日常的に起こり得るのですが、このような「嫌な経験」の頻度や内容によって誰もが「もうこの会社辞めようかな」とふと考える瞬間が訪れます。
その気持ちが本気なのかどうなのか。
本当は辞める気まではなくても、瞬間的に頭にきて「もうこんな会社辞めてやる!」となることもある訳ですが、その日の帰り道には冷静になって、「また明日から頑張ろう」となる場合も現実的には少なくありませんね。
転職への思いが具体的になる、言い換えるなら本気になるタイミングやキッカケは色々でいつそのタイミングがご自身に訪れるかはわかりません。転職を計画的に進めようと思っていてももしかすると何かのキッカケで来週本気になっているかもしれませんし、すぐにでも転職したいと考えていてもダラダラとなかなか決まらず、いつのまにやら数年過ぎていたなんていうケースもあります。転職という一大イベントはスケジュール帳に書くことが難しいものなのです。
転職を急いだ方がいい場合とは
転職には時期があります。
どうせなら良い時期に転職をした方が、良い結果に結びつく可能性が高まる訳ですが、転職に良い時期というのは目的により異なることから一概にいつとは言えません。
例えば、転職をキャリアアップ、特に待遇をグッと上げるための手段として利用したい場合、経験や技術もないのにホイホイと別の会社に移っても待遇アップは望めません。
キャリアアップを目的とする場合は、例えば「30歳まで今の会社でこういう経験を積んで、それをさらに活かすことが出来る環境に転職する」など中長期的な計画が望ましいです。中長期的に転職計画を立てることが出来れば、ある意味現職では打算的な動きも可能です。つまり次のステージで活躍するための経験や成果を求めた動きをしていくということです。
また、別の例として会社の経営や先行きが将来的によろしくなさそうだとか、業界自体が斜陽産業(成熟期が過ぎて需要が傾向的に減少している産業)だといった場合、そこまで急ぐ必要はないながらもやはりチャンスがあり次第、別の環境に移っておくほうが得策ということになります。
そういう様々な時期がある中でとにかく転職を急いだ方が良いという場合もあります。それは現職で働いていることが原因となり体調にまで異変をきたしている場合です。
転職のきっかけとなるメンタル面の不調
転職をしようと考える方は、現在の環境に何らかの不安や不満を感じていると思います。
会社や上司の文句を仲間や同僚に言って気がまぎれる程度のレベルであればいいのですが、その不満の内容が例えばパワハラやセクハラ、しかも深刻なものである場合は、ただちにその解決策を講じる必要があります。
基本的には、人事やハラスメントに関わる社内窓口を利用して解決を図っていくことが原則ですが、それはある意味理想的、いわば綺麗ごとです。現実的には、社内の相談窓口に相談したところで解決にいたる可能性が極めて低いというケースがあります。
そのような場合で、かつ現職の環境に特段の未練やメリットを感じない場合、転職と向かい合った方が賢明であるケースもあります。「どうしようかな」と迷っていると最悪体調面まで支障を来します。特にメンタル面の不調は要注意です。
会社員のメンタル不調の症状として代表的なものをいくつか挙げます。
会社員のメンタル不調の症状
会社のことを考えると憂鬱でたまらない
会社のことを考えると胸がどきどきしたり、息苦しい
常に気分が沈んでいる
何をするにも元気が出ない
理由もなく不安になる
食欲不振
不眠(夜中に目覚めてしまう)
これらのサインがある場合で理由が自分の中で明らかである場合、その理由を解決するための方法を真剣に考える必要があります。
ここからは企業人事としての本音と現実ですが、この理由を解決するために周囲に意見を求めると、努力を求められたり、時間を掛けたり、工夫を試みたり、自発的かつ前向きな方法が挙げられるケースが多いです。
しかし、メンタルに支障が出ている当事者としては、そもそもこの問題の原因を根本的に変えたり、解決したり出来ないのでそれが不安や不満を助長してメンタルの不調にいたっているというケースが多いのです。例えば次のようなことが原因であった場合、自分からの努力や働きかけで環境を変えることができるでしょうか。
努力による改善が困難な例
上司のパワハラやセクハラ
ものすごく性格の悪い同僚や上司がいる
ものすごく難易度の高い業務の遂行
会社全体の雰囲気や社風が合わない
会社の制度(ノルマやルール)が厳し過ぎる
これ以外にも社員のメンタルを苦しくさせる事柄はありますが、これらの一例だけでも個人の力では如何ともしがたい場合が多いのです。
理想論としては「頑張って解決すればいいじゃん」とか言われたりするのですが、現実的には難しい場合が多いのですよ。誰でも大小の課題を抱えていて、人から見ればそんなの解決できるじゃんと思われがちですが、当事者には当事者なりの苦しさと現実があるのです。
問題解決手段の選択肢としての転職
現在の環境に問題を感じていてメンタルにまで不調が出ている場合、冷静に物事を考えたり、判断したりする能力が落ちているケースがあります。
そのままさらに我慢が続くとメンタル面の疾病にいたります。
企業人事の経験が長い筆者はそのような社員も見て来ました。
自社の環境を改善することが最重要ですが、本稿では組織や制度で問題を解決するということを書いておらず、転職を考える必要性についての稿なので環境改善はいったん飛ばしまして、メンタル面の不調をご自身でも感じるレベルになっており、かつ問題解決の手段を講じることが困難と判断される場合については、別の角度の選択肢として転職を具体的に考えてみていいと思います。
これは敵前逃亡でも何でもありません。
最悪の事態を避けるための解決手段のひとつと割り切って転職を具体的に考えると、実はその瞬間から視野がパーッと明るくなったりするのです。
最優先すべきはご自身の健康面であるということは言うまでもありません。仕事によるストレスで健康面を著しく害してしまい大変な事態にいたってしまったというケースは耳にしたことがあると思います。まさかご自身がそのようになるとは思っていない方がほとんどだと思うのですが、メンタル面は危険です。ストレス過多により徐々にメンタル面がやられていくといつの間にか正常な判断が出来なくなっているというケースって実際にあるのです。
そこまで行く前に、客観的にご自身の健康面や環境面を判断できるうちに最善の選択をして欲しいと思います。
健康やメンタルを守るための行動と選択肢としての転職
やみくもに転職を急ぐことをお勧めはしていません。
もし、メンタル面に不調があったとしても仮にその原因があと少しで解決しそうだとか、あと何ヶ月で原因が取り除かれることが期待されているという場合は、すぐに転職することとあと少し我慢して現職に留まることを天秤に掛ければ良いだけです。
天秤に掛けるときのポイントでぜひお伝えしておきたいことがあります。
現在の嫌な部分と転職という期待を天秤に掛けると何となく転職の方がいいかなという結論になりがちです。
しかし、ここはぜひ客観的に判断して欲しい所です。転職にはパワーも使いますし、転職先が必ずいい環境とは保証されていません。
転職すると環境がガラッと変わりますから人間関係を一から構築したりするのも大変ですし、転職先にだって嫌な上司や気の合わない同僚はきっといる訳です。
そういったハードルを越えることが前提だとしてもやっぱり転職した方が良いという方向に天秤が傾けば、ここからはもう迷う必要はありません。ご自身の身体やメンタルを守るためにも解決策のひとつとして転職を具体的に考え始めましょう。
転職は環境の改善が目的であることを忘れずに
転職することを決めたら、ここからやることはひとつです。
それはその転職をご自身にとって最善のものにすること。
最善の結果を得るためには、転職の動機を明確にする作業がとても重要です。
つまり転職しようと決めた原因を意識しながら転職先の企業を選択していく必要があります。
ごくごく分かりやすい例を挙げると、ワークライフバランスが整わないことが原因で転職しようと決めたのに、つい待遇がとても良い案件に目が行ってしまう、ということになるとその転職先でワークライフバランスが整うかは不確定です。
転職の動機を意識することは、転職活動での志望理由にも直結しますから、なるべくブレずに軸を持って志望企業を探していきましょう。
転職活動では、志望企業の探し方にもポイントやコツがあります。
特にブラック企業を選択してしまうとこれはもう大変なことです。
環境を改善するための転職だったのに益々悪くなったというケースも実際に起こります。転職しよう!と思い立った方は今の環境よりも良い環境に移ることを最低条件とし、よもやブラック企業に引っかかるようことのないようにして下さい。
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ブラック企業の主な特徴とは。意外と身近な存在なので要注意
ブラック企業は実は身近な存在です。新卒であれば就職先にブラック企業を選択しないこと、転職する方であれば転職先にブラック企業を選択しないということが最も重要な
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まとめ
本稿では、転職は慎重な判断をして下さいということと転職することはパワーもいるということを忘れずにということをお伝えするとともに、もし体調面、メンタル面にまで支障を来すくらい現職に問題が生じていれば、それは無理をせずに転職という選択肢を具体的に考えることが心の苦しさを多少なりとも解消するきっかけになるということを書いて参りました。
転職について様々な角度から企業人事の本音と現実を書いておりますのでぜひご参考にされて下さい。
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