こんにちは人事の夏沢です!
企業人事が本音と現実を書くことを本旨としているブログです。
筆者は企業人事として採用や人材育成、人事制度の構築など総合的に実務を行ってきた叩き上げの人事です。僭越ですが人事の現場については詳しいですよ。
つい綺麗ごとや理想論が語られやすい人事界隈なのですが、実務からの叩き上げの現役人事管理職の視点で様々な本音と現実を書いております。
今回の記事は、ブラック企業の特徴としての「みなし残業制は残業代未払いを疑おう」という内容です。
ブラック企業にも特徴は様々ありますが、筆者はみなし残業の悪質さが特に大嫌いなのです。その理由や闇の部分について書いて参ります。
ブラック企業を避けるためにも新卒としての就活する方やこれから転職を考えているという方はぜひご参考にされて下さい。
ブラック企業を給料の観点から書いてみる
ブラック企業にも様々な種類があります。つまり、会社の環境の中でどこがブラックなのかということです。
一般的にブラック企業として判断されることが多い項目というのは次のような要素です。
ブラック企業に当てはまる要素
長時間労働
残業代の不払い
休日出勤
休日出勤手当の不払い
給与や待遇が不当に低い
パワハラやセクハラの横行
コンプライアンスの意識の欠如
就業規則をはじめした諸規程類の未整備
ワンマン経営によるガバナンス欠如
精神論の横行
これらの要素が社内にあれば即ブラック企業という訳ではありませんが、該当する要素がある場合は結果的にブラック企業化してしまったり、少なくとも働きやすいとは言えない環境であると言えます。
その中でも本稿では給料という観点、特にみなし残業制を導入しているブラック企業について書いて行きたいと思います。
ブラック企業はあの手この手で待遇を良く見せようとする
ブラック企業は当然給料が低いと思われがちですし、実際に不当に給料が低いことは場合によっては違法です。
労働者に支払われる賃金は厚労省が定める最低賃金を上回っていなければなりません。地域別最低賃金は時給額で示されていますので月給を時給換算して比較し、これが最低賃金を下回っていれば違法なのです。
仮に時間給換算した給料が最低賃金を下回っているというのは問題点として分かりやすいですが、ブラック企業の給料面は一概にそんなに分かりやすいものであるとは限りません。
ブラック企業の中には、新卒の初任給や転職サイト上に記載している基本給がとても高いものが散見されます。一見、「おっ!待遇いいじゃん」となりがちなのですね。ところが当然そこにはワナがあります。その待遇の中に何が含まれているのかが重要です。例えば一定の残業代が込みになっていたり、賞与が込みになっていたり、インセンティブ(褒賞)が込みになっていたりとあの手この手で給料を高く見せようとするブラック企業がたくさんあります。
本稿ではその中でも特に悪質だと筆者が考えるみなし残業を中心に給料という観点でブラック企業を考察していきます。
まずは、ブラック企業に見られる給料面の特徴の代表格を挙げてみます。
サービス残業
残業をした実態があるのに残業代を支払わないというものです。
正直、だいぶ昔は多くの会社で横行している事実もありましたが、現在は労基署もサービス残業撲滅にとても力を入れており、サービス残業=悪という認識は広く浸透しています。それでもブラック企業では次に挙げるような例をはじめとして残業代を支払わないための口実を作りながら正当な残業代を払いたがりません。
タイムカードを定時で打刻し実は残業している
みなし残業制を導入している
変形労働制を導入している(ことになっている)
タイムカードを定時で打刻しておいて実際は帰宅せずにそのまま働いているというのはかなりわかりやすいサービス残業です。
このパターンは分かりやすすぎて結構減ってきているのではないかなと思いますが、打刻しておいてそのあと勤務をしていた証跡(メールのやり取りとかファイルの保存日時とか)を残しておけば、サービス残業の証拠としてとても分かりやすいので、もし今現在そうだという方は何かの時のためによく証跡を残す様にしておくといいと思います。
続いて本稿で特に書いておきたいみなし残業制についてです。
みなし残業制は悪質
みなし残業制とは、固定給の一部にすでに何時間かの残業代が含まれているというもの。
この制度自体は違法ということはありませんが、みなし残業として含まれているのは何時間の残業で割増率もきちんと加味されているのかどうかを雇用契約の時点で社員に説明をしておく必要があります。
そもそも筆者はこのみなし残業制というのが大嫌いでありまして、なぜ嫌いなのかというと就業開始時点ですでに残業が発生することを前提としているこの制度は、適切な人材確保や労務管理や人事制度が出来ていないと言っているのと同意義であるからです。
就業には所定労働時間というものがあります。労働時間は所定、つまり定まっているべきで原則1日8時間までです。会社は少なくともその範囲内で終えられる業務を課さなくてはなりません。もちろん不確定要素により所定外労働(残業)が発生することもあります。忙しい時や締め切りに間に合わない時は誰にでもあります。ですが、それはあくまでも所定労働時間で業務を遂行しようとした結果であって、恒常的に間に合わないのであれば業務の質や量に問題があるということなのです。
その問題は組織として解決策を講じなくてはならず、例えば人員を増やすとか他の人に業務の一部を移管するとかの工夫により所定労働時間で収まる様にしていくものです。ところがみなし残業ではすでに残業発生が見込まれていますから、所定労働時間で終わらない業務が正当化されています。
所定労働時間内で終わらないという問題を解決することを放棄しているのです。
みなし残業制というときちんとした制度のように聞こえてしまうかもしれませんが、人事の観点から言えば正当な人事制度とは思えません。後述しますが、残業代を不当に削減しようという手段以外の何物でもありません。
一応補足をしておきますと、みなし残業制度=違法ではありませんし、中にはこの制度にメリットを見出して適正に運用している会社もありますがそれはかなり少数派です。
みなし残業は残業代未払い予備軍
みなし残業は問題解決を放棄している制度であるだけでなく、残業代の未払い予備軍です。そもそもみなし残業制を導入している企業の制度導入の本音の一部には残業代の削減があります。
残業代削減の解決手段は残業時間の削減以外になく、残業時間の削減のために様々な策(業務効率向上や組織改編等)を講じるのが通常の会社なのですが、みなし残業制を導入している企業では「みなし残業制なので残業代は固定給に含まれている」という解釈によりいくら残業してもみなし残業代以上の残業代を支払わない、つまりそれにより残業代を削減しているというケースがとても多いのです。
企業がみなし残業制を導入しているのは、残業代抑制の手段として活用したいというのが本音という場合が多いのですが、これはつまりブラック企業そのものです。みなし残業を超えた部分をちゃんと残業代として支給する気があるのであれば、みなし残業を導入しなくても出来ます。
みなし残業制導入企業の実態
みなし残業制を導入している企業で30時間残業しても50時間残業してもみなし残業内ということで残業代が変わらないというケースがあるとします。その環境で仮に80時間残業したらいくら残業代が支払われるでしょうか。おそらくみなし残業制を導入しているほとんどの会社で残業代の加算は0だと思います。
なぜならみなし残業だから。これは残業代の不払いで違法です。
みなし残業制を導入している企業で「当社のみなし残業は30時間なので80時間残業した場合は残りの50時間分を支払うし、60時間を超えている部分は割増率も異なるので加算して支給します」としている企業はかなり少ないと思います。
みなし残業は「みなし」というそもそもあやふやな表現も相まって、いくら残業しても残業代コミコミの固定給となっているのが実態なのです。
変形労働制にも要注意
変形労働時間制を導入している企業も残業代については留意が必要です。
変形労働時間制は原則1日8時間、1週40時間の労働時間を特定の日または週に1日8時間または1週40時間を超えて、一定の限度で労働させることができる制度です。
変形労働時間制は複雑な制度で労働時間を月単位、年単位で調整することで一定の枠内での労働を法定内労働として取り扱うためのものなので、これを導入するには当然しっかりと就業時間や労務管理について規程が整っていなければなりません。そもそも労基署への届け出も必要です。
しかし、変形労働時間制をきちんと理解せず変形労働時間制を導入していることが法定の労働時間を超えて働かせても問題がない制度と解釈しているケースがあります。そもそもそのような会社では、変形労働時間制を自称しているだけで制度化もされていなければ労基署への届け出もしていない場合が多いのが実態です。
当たり前ですが変形労働時間制を導入していても労働時間が時期によりシフトしているだけで法定の労働時間を超えた部分は残業代を支払わなくてはなりません。変形労働時間制を理由に所定労働時間を超えた時間の残業代を支払わなくていいという理屈はありません。
働き方の正当な制度として変形労働時間制が導入されているのであれば問題ありませんが、「変形労働時間制なので残業代はない」といったニュアンスの説明を会社から受けたことがある方は要注意です。
みなし残業制の場合、残業代未払いを疑おう
みなし残業制にしても変形労働時間制にしても、その制度の主旨やメリットを理解して正確に運用出来れば問題はないものなのですが、ブラック企業の残業代不払いの手段として使われているケースが多いです。
特にみなし残業制を導入している企業はブラック企業である可能性を疑っておいて損はありません。
企業人事の実務の観点から言ってみなし残業を導入することにはほとんどメリットはありません。
つまり、みなし残業制は残業代削減の目的で導入されている場合がほとんどであるということ、そしてみなし残業なのでいくら残業しても残業代は加算されないという運用になっている可能性が高いということを意識していただき、就活や転職時の企業選びのご参考にしていただければと思います。
ブラック企業はたくさんありますが、みなし残業制を悪用している企業はそれ以外の人事制度もまずきちんと機能していないということが確定的ですよということを追記しまして本稿はこのあたりで。 違法業者もある退職代行サービスは安心、安全に進めることができるサービスを選択する必要があります。退職代行は代理交渉であって正式に代行できるのは 続きを見る
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