こんにちは人事の夏沢です!
企業人事の本音と現実をテーマとしています。
人事にまつわる様々なことを書かせていただいております。
就活、転職、給与、労務などはそれぞれカテゴリーを設けておりますのでぜひご覧ください!
筆者について企業での人事部門を10年以上経験しています。採用、研修、評価、給与、社保など人事系の実務は網羅。
人事についての経験は控えめに言ってまずまず豊富でございますよ。
制度設計や企業合併でも人事の実務を経験しています。
そしてとにかく人事の現場を重視しています!
綺麗ごとでない企業人事の本音をテーマにした本ブログですが、今回は「テレワーク」について。
コロナ禍で一気に働き方の選択肢のトップ集団に加わったテレワークという働き方の本音と現実が分かる記事です。
テレワーク導入を一気に加速させたコロナ禍
以前、別の記事で働き方改革や働き方改革の現実について書きました。
働き方改革の定義は「働く人々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で選択出来るようにする改革」ということだそうです。
今回の記事では、そんな多様で柔軟な働き方のひとつであるテレワークについて、企業人事から見た本音と現実を書いてみたいと思います。
テレワークについて記事にするにあたり、まずはコロナ禍と言われる一件に触れる必要があります。
テレワークそのものは昔からあると思うのですが、多くの企業では認められていないか、限られた社員(例えば育休明け社員とか療養中の社員)に認めてきた働き方でした。
しかし、コロナ禍においてはテレワークを推奨すべきという社会的な要請もあり、多くの企業で制度化や導入が進みました。
コロナ禍のピーク時期には、テレワーク導入企業は全体の5割超とか様々な数字も飛び交いました。
おそらくこの記事を読んでいただいているみなさんの会社でもテレワークがコロナ禍をきっかけに導入されたという方がいらっしゃると思います。
筆者の勤務する会社もその口で、以前は積極的にテレワークを推奨するような環境ではありませんでしたが、コロナ禍をきっかけにテレワークの導入や制度化が進みました。
筆者自身もテレワークという働き方を経験し、その後も大いに活用するにいたりました。
テレワーク導入が進まなかった訳と進んだ訳
そんなテレワークについて、ここからが企業人事として感じた本音と現実です。
テレワークがこれまで積極的に進まなかった理由は主に次のようなことだと思います。
これまでテレワーク導入が進まなかった理由
テレワークの勤怠管理の仕方が整理出来ていない
PCやネットなどテレワーク環境が整備しきれていない
通信費の負担をどうするか
自己管理が出来るか疑問(サボらないか)
指示や指導、コミュニケーション上の問題
人事評価をどうすべきか
上に挙げた懸念点はどこの企業でも議論されたのではないでしょうか。
これらの懸念点をひとつずつ丁寧に整えていくと大変な時間と労力を要しますが、コロナ禍においては、例え見切り発車となったとしても感染リスク軽減という目的が上回り、一気にテレワークの実施が進むことになりました。
テレワーク導入のメリットとデメリット。その先の生産性
人事の現場でも様々な意見が挙げられました。
細かいことまで気にすればキリがなく、テレワークを実施するために就業規則やその他関連する規程類をすべて改正してから実施などということになれば感染リスク軽減という目的は果たせませんから、いい意味で強引に社内ルールを見直したり、整備したりするキッカケになりました。
ここで、一般的によく言われるテレワークでのいい側面をちょっと挙げてみます。
一般的にいわれるテレワークの長所
通勤の時間が掛からない
自宅でリラックスして業務が出来る
人間関係のストレス軽減
次にテレワークのわるい側面を挙げます。
一般的にいわれるテレワークの短所
業務に集中できない
組織やチームで意思疎通がとりづらい
対面より時間が掛かる場合もある(技術的な習得など)
いい面とわるい面がありながら、結局テレワークは今後も積極的に利用すべきなのかそうでないのか、人事担当としての本音と現実を書いてみますとテレワークの内容と期間がポイントであると考えています。
つまり、「誰にでも」、「どれだけの期間でも」テレワークを認める場合、その期間が長くなる程、生産性は落ちると思っています。
理由は、テレワーク開始当初は、本来出社して行うべき業務を自宅でやってるからしっかりやらねばという意識が働きますが、これが恒常的になれば、上司や同僚の目も気にならない、仕事とプライベートのメリハリも付きづらいという環境にすっかり慣れてしまい、オフィスに出社して仕事のオンオフがありながらの働き方に比べ、長期的には生産性は下がるものと推察します。
「そんなことは絶対ない」、「自宅で一人でやった方が生産性が遥かに高まる」という人は、会社員ではなくてフリーランスでやった方が生産性が高く、稼げる方だと思いますのでそちらの道で活躍するという選択肢もあるかもしれません。
多くの会社員は、何かのプロとして自律して単独で社会に価値を提供する手段がないので会社という組織の一員としてその会社が社会に提供する付加価値を作るための業務の一端を担当しています。
テレワークもそれに他なりませんが、あまりにも当たり前の環境になった場合、会社員の多く(全ての人とは申しません)は、リラックスし過ぎ、ストレスフリー過ぎな環境に埋没すると思います。
みんなで育てよう。テレワーク導入は新しい働き方の芽
ただし、テレワークそのものは前述のとおりメリットもたくさんある訳ですから、節度を持ったテレワークを一般的な働き方にしていくのが重要だと思います。
そのためには、利用日数を徐々に増やしていくなどの施策がいいのではないかと思います。
例えば、「週に1日認める」から段々増やしていくなどです。
また、別の記事で書いた障害者採用でも触れましたが、最初は特定の事情のある社員にのみテレワークを認め、その対象を段々増やしていくでもいいかもしれません。
多様な働き方を認めて行こうという社会的な要請もあり、コロナ禍により加速した新しい働き方の芽を無理のない範囲で育んでいく姿勢が各企業の人事に求められていると思います。
何事も選択肢が少ないよりは多い方がいいです。特にそれが働き方の選択肢であるならば、多様で柔軟なことに越したことはありません。
一方、性悪説に立つ気は全くないのですが、やはり現実的には多くの会社員にとって恒常的なテレワークは怠惰に直結する予感です。予感というより確信に近いかもしれません。しかし、会社員は大人ですからここはバランスをとることができるとも思います。つまり、テレワークを良識的に活用しながら、テレワークでやれることと、出社して現場でやるべきこと、これらを適宜組み合わせながら業務を遂行していくという働き方が現実的なのではないかなと思います。
そのためにはまず、企業の人事担当者がしっかりテレワークを導入すること、そしてテレワークという働き方を珍しいものとせず、日常的な働き方の選択肢としてなじませていくこと、そして最後は社員の行動を信じること、これが大切であると思います。
やがて労働人口が益々減ってきます。新しい働き方、まさにテレワークを含むネットワークの活用や物理的な制約に縛られない働き方などを活用しなくては、これまでの生産性や経済活動を維持できなくなってくるかもしれません。少々大げさな話になりましたが今働き方を改革したり、新しい働き方を増やしたりする取り組みは、将来のそういった問題を解決する一助とするために今みんなで育むべき新しい働き方の芽なのだと思います。この芽はしっかり育ち、逆に社会を支えるほどの大樹となるでしょうか。大樹となる前には様々な枝分かれもありますから、現時点では答えは不明ですが少なくとも働き方や労働時間に大きな変化の兆しがある今が時代の変化の岐路なのだなと感じたりもします。
そんなこんなでテレワーク。
最後はやや大げさな話になりましたが、私たち会社員の新しい働き方の選択肢として上手に付き合っていくことこそが、働き方を改革することに直結するのだと思います。