こんにちは人事の夏沢です!
人事にまつわる様々なことを書かせていただいておりまして、時に人事の本音、時に人事の舞台裏、時に給料や出世のポイントなどについて、企業人事ならではの視点でブログを書いております。
就活、転職、給与、労務などはそれぞれカテゴリーを設けておりますのでぜひご覧ください。
【筆者について】企業での人事部門を10年以上経験しています。
採用、研修、評価、給与、社保など人事系の実務は網羅。
人事についての経験は僭越ながら豊富でありますよ。
制度設計や企業合併の実務も経験しています。
さて、会社員であれば避けて通ることができない人間関係というものについて書いてみます。この人間関係については他の記事でも書いておりますが、本稿は主にメンタルヘルスです(第一部はこちら)。
人事は人に関する事柄が仕事です。
採用や人材育成や人事評価だけが仕事ではなく、むしろ社員とどの程度関わり合いを持つことが出来るのか、社員のことをどれだけ知っていて、どれだけ考えられるのか、こんなことが基本にして重要だったりします。
そういう訳で「人間関係はメンタルヘルスに直結。その対処法について」。
これも企業人事のリアルです。
ぜひご参考にしてください。
今も昔も退職理由としての王道である「人間関係」
社員が退職するときの理由は様々ですが、一般的に主な理由として挙がりやすいものがあります。某転職サイトによる退職理由の本音ランキングを以下にまず抜粋してみます。
退職理由本音ランキング
1位:上司・経営者の仕事の仕方が合わなかった
2位:労働時間・環境が不満だった
3位:同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった
4位:給料が低かった
5位:仕事内容が面白くなかった
このランキングが常にトップ理由ではありませんが、概ねどこの会社でもある程度は退職理由の上位に来るものなのではないかと思います。
このランキングで注目すべきポイントは、人間関係です。
人間関係に関する理由が2つ(1位と3位)もランクインしているんですね。しかも、給料などの労働条件による理由よりも、人間関係が退職の引き金になっていることがうかがえます。
つまり、人間関係は退職理由の本音としてはかなりメジャーなものと言えます。
企業人事の立場からすると社員同士の人間関係に起因する社内トラブルは実際にかなり身近にある問題です。
人事はその職務上、社員同士の人間関係やいざこざを把握しやすい立場にあります【前回記事参照】。
人が少人数でも集まれば、もうそこには自分と合う人、合わない人がいる訳で、会社という組織内に人間関係の問題が皆無という環境はないと言えます。
筆者もこれまでの長い企業人事の経験上、たくさんの社員の人間関係に関するトラブルを見てきました。
その中でやっぱり多いのは上司や先輩とうまくいかないというパターンのものです。
パワハラを始めとしたハラスメントを受けている訳ではないけど、上司や先輩の言動に共感出来なかったり、不満を感じたりすることが重なると人によってはメンタルヘルス不調に繋がってしまう場合があります。
最近はハラスメントに関する対応が各社具体的に規定されていると思いますので、誰が見てもハラスメントだという内容であれば解決もしやすいのですが、人間関係のトラブルというのは上司や先輩、同僚と性格が合わないとか、相手がいじわるとか、結構感覚的だったり人によって感じ方が異なることが原因だったりすることも多いです。
いずれにしましても他者との関りによりメンタルヘルス面が不調になることがあります。
メンタルヘルス不調になれば当然業務上にも支障が出ますし、療養を要するにことになったり、退職にいたることになったり等、とにかく本人にも会社にもいいことはありません。
人事がメンタルヘルスで担うべき役割とは
ここでからが人事の本音と現実。
きっと気持ちが弱ってしまっていたり、メンタルヘルス面が不調な人は今の仕事や会社の環境について色々思いを巡らせていることと思うのですが、人間関係を原因としてメンタルヘルスが不調な人に企業人事の立場からお勧めしたいことがあります。
それはとにかく自分だけで考え過ぎないことです。
自分のことなのに自分で正しく判断できない状態になっている可能性があるのがメンタルヘルス不調の注意点です。
そして、自分だけで考えない=誰かに相談すべきということになるのですが、その最終的な相談先は人事ではありません。上司や先輩でもありません。
絶対にメンタルヘルスの専門家にしてください。
その専門家につないでもらう窓口として人事を最大限利用するのは全然ありですし、むしろそうすべきです。
企業人事がメンタルヘルスに関して担うのは次の事柄であるべきです。
人事がメンタルヘルスで担う役割
・社員のメンタルヘルスに関わる教育研修
・職場環境の把握
・職場環境の改善
・メンタルヘルス不調者の把握
・メンタルヘルス不調者への専門家紹介
・専門家と協力した上での職場復帰支援
人事そのものがメンタルヘルス不調者から相談を受け、解決策を探るのは避けるべきです。
理由は、人事はメンタルヘルスを含む、医療分野の専門知識はないからです。誰しもが社員から相談を受ければ、力になりたい、解決してあげたいと思うわけですが、ことメンタルヘルス不調については間違った知識や情報を提供してしまったり、つい自分や周囲の体験談から解決策を講じがちです。
しかし、メンタルヘルス不調は医療の領域。専門的な知識が必須な分野です。
ですのでメンタルヘルスに対する人事の最大の仕事は、とにかくいいメンタルヘルス医師(心療内科等の先生)と太いパイプを構築すること。そしてその先生を通じて社員のメンタルヘルス不調を回復していくことです。
今まさにメンタルヘルスが不調なあなたへ
もし、今現在メンタルヘルスが不調なんだという方が本稿を読んでいただいているとしたらぜひまずは相談窓口として人事に気軽に相談をしてみて下さい。最終的な相談先は専門家である医師にすべきですが、一次受付としては人事で結構です。
メンタルヘルス不調の人事への相談自体は決して遠慮する必要はありません。
人事担当にとっては重要な業務であり他の社員からの相談もあり慣れています。
躊躇や遠慮はいりませんよ。
メンタルヘルス不調は風邪と同じで誰にでも起こり得ます。
まったく珍しいことではないのです。
組織の中で仕事をしていれば誰もがメンタルヘルスが不調になる可能性があるんです。
理想論で解決できるほどメンタルヘルスは甘くない
社員のメンタルヘルス不調は多くの場合、医師による相談、カウンセリング、その他加療のみでは解決しません。
職場側でも解決、改善策を講じる必要がある場合が少なくないからです。
人事が講じる解決策は、正直いうと配置替えが最も現実的な選択肢です。
しかし、この配置替えが根本的な解決になっていないことは人事担当者が最もよく知っています。
人間関係が原因の場合、「原因となった社員は他の社員のメンタルヘルスも不調にしてしまう可能性がある」ということ、業務内容が原因の場合、「他の社員がその業務に取り組んでも同じようにメンタルヘルス不調になる可能性がある」ということを人事は人員配置において経験したことがある場合が多いからです。
つまり、ある社員のメンタルヘルス不調の原因が、人間関係や業務内容だった場合、その原因となった事柄自体を改善しなくては、配置替えにより救われるのは復職した社員であって、その後任として配置された社員は同じようにメンタルヘルス不調をきたす可能性があるのです。
これらの解決策をふんわりと理想的に書くと「快適な職場環境になるように努める」とかになるのですが、そんな理想論で解決する程、メンタルヘルスは甘くありません。
企業人事は社員の健康を把握し、維持する任を負います。
ここは真剣に取り組まねばならない事項でありまして、社員のメンタルヘルスを不調にする原因が特定されている場合、ドラスティックな解決手段を講じることも選択すべきです。
社員のメンタルヘルスを乱す芽を潰す!
ちょっとオブラートに包んだ表現になってしまったのでストレートに言うと、
部下のメンタルヘルスを不調にするような社員がいればその社員に部下を付けないようにする
社員のメンタルヘルスを不調にするような人物であれば他社員との関わりが少ない部署に異動させる
社員のメンタルヘルスを不調にするような仕事があるならば仕事の内容や担当、業務割り当てを再構築し組織として解決する
このような具体的解決策を講じないと社員のメンタルヘルス不調の芽は潰せません。
企業人事の仕事というと多くの場合、採用、研修、厚生労務、組織作りや人事制度がイメージされやすいのですが、社員の心の健康の保持増進といった部分もかなり重要な仕事だったりします。
人間関係という問題の切り口はやはり複雑だ
今回は人間関係に起因するメンタルヘルス不調に触れましたが、次の記事【人間関係を武器にして出世する人の話。打ち鳴らせ!出世の太鼓】では、退職やメンタル不調とは真逆の人間関係による活躍と出世について書いていきますので人間関係という切り口の複雑さを少しでもお伝え出来ればと思います。