こんにちは人事の夏沢です!
企業人事の本音と現実をテーマとしています。
人事にまつわる様々なことを書かせていただいている現職の人事部門マネージャーです。
【筆者について】企業での人事部門を10年以上経験しています。
採用、研修、評価、給与、社保など人事系の実務は網羅しておりまして、僭越ながら人事についての経験は豊富であります。
制度設計や企業合併でも人事の実務を経験しています。
人事の業務を行っていると様々な問題に直面します。
問題といっても色々種類がある訳でありまして、今回はその中でも割とストレートな内容。「もし社員がいきなり音信不通になったら?」です。
ちょっと想像してみるだけでも、「事件に巻き込まれたのか!?」、「ただの無断欠勤か!?」、「急な体調不良で動けないのか!?」など毎日出勤していた社員がある日急に音信不通になるようなことがあると所属先ではパニックになることが容易に想像できますね。そしてこういうことが実際に起こるのが企業人事の現場のリアルなんです。
社員が音信不通になることなんてあるのか
企業にも規模は様々ありますが、単純に社員数が多ければそれだけ社員に関わるイレギュラー案件が発生する可能性は高くなります。
イレギュラーの内容は様々ですが、今回の記事では特にイレギュラーといえる「社員が音信不通になった場合」という内容について書いていきたいと思います。
そもそもそんなことあるの?と思われかもしれませんが、アルバイトのスタッフではなく正社員であってもごく稀に発生します。
筆者も長い企業人事の経験の中で何回か遭遇しています。
社員が急に無断欠勤をした場合、その所属先や人事はまず次のような対応をします。
社員の急な無断欠勤への初期対応
本人の携帯に連絡してみる
同僚同士でLINEやSNSのつながりがあれば連絡してみる
本人から緊急連絡先を会社が預かっていれば緊急連絡先に連絡する
実家や家族に連絡し、そちらからも連絡してもらう様に依頼する
住居に行ってみる
これらを行った結果、全く何の連絡も取れず、音信不通であればもはや失踪と同じになりますから、家族にその旨を伝え、警察への行方不明届を出してもらうということになります。
企業人事の経験を綴るブログで行方不明届とは物騒な感じですが、長く人事を経験しているとたまにはこういう事態も発生することがあります。
音信不通社員と結果的にコンタクトが取れるパターン
この行方不明届(以前は捜索願といわれていました)は、誰でも提出できるものではありません。
基本的には親族が行うもので、その他として「行方不明者と社会生活において密接な関係を有する者」として雇主(事業主)なども届出を行うことが出来ますが、やはり原則親族からされるのが自然かと思います。
これにより音信不通となっていた社員が見つかれば、その後は次のような手続きに移行します。
音信不通社員とコンタクトが取れた時
音信不通となっていた理由を聞く
今後どうしたいかの意向確認(在職したいのか退職したいのか)
処罰の検討(無断欠勤が懲戒事由として定められている場合)
退職覚悟でそのような行動を取っていたのであれば、お望みのとおり退職させるのがよいという判断になると思います。
在職したいということであればレベルは様々なあれどなんらかの注意をした上で在職を認めるということになります。
ただし、それ以後その企業内で重用されることはないと思われます。
音信不通社員とコンタクトが取れないパターン
一方、もし行方不明届を出しても音信不通社員が見つからなかった場合、無断欠勤を懲戒事由として規定していれば、懲戒解雇とすることも可能ですが、本人が音信不通な訳ですから懲戒解雇の通知を本人に届ける手段がありません。
このような場合、裁判所を通じて公示による意思表示をしたり(意志表示の公示送達)、実質出社の可能性はゼロであるのに退職日を公示による意思表示到達後30日後にするなど少し複雑な手続きが伴います。
いずれにしてもこのようなイレギュラーが発生した場合、企業の人事担当としては企業の対応としての不手際による責めを被ることがないように最大限留意するという思考になります。
例えば、音信不通社員に万が一のことが発生していた場合、企業の対応が遅かったのではないかとか、家族に即時情報提供すべきだったのではないかとか、企業側の不手際によりさらなるトラブルに発展するようなことがないように先手先手で対応しておくのが大切ですし、筆者の場合はとにかくそこ(初動対応)を強く意識して動きます。
そして、いつ、どこに、何を伝えてどのように進捗したかをつぶさに記録しておくこと。
これが重要です。
企業人事の業務は平和なことばかりではない
今回は社員に関わる様々なイレギュラーな事例の中でも比較的わかりやすいものを書いて見ました。
あまり読んでいただいた方にとって明日すぐに役立つ記事にはならないと思いますが、これも本ブログのメインテーマである「企業人事の本音と現実」の一つであります。
つまり、人事を担当している限り社員の採用や人事制度や人材育成といった前向きの事ばかりを考えていればいいという訳ではないのです。人事は人に関する事柄を業務としています。それはすなわち平和なことだけでなく、様々な問題やいざこざや複雑な事象に対峙することに他なりません。僭越ではありますが、スマートにアカデミックに人事の理想を語るだけでは、企業人事の業務としては不足しております。今回は一例としての音信不通社員ですが、もっともっと色んなパターンの問題って生じます。だって、組織は人で出来ていて、人って誰しもが常に健康で、常に平和で、常に良い状態って訳ではないじゃないですか。それに伴い企業人事の業務は平和なことばかりではない。でも、それでいいんです。企業人事の本質は自社の社員のために動くことなのですから。
そんなことで今回は企業人事の本音と現実の一部を紹介してみました。