こんにちは人事の夏沢です!
人事にまつわる様々なことを書かせていただいておりまして、時に人事の本音、時に人事の舞台裏、時に給料や出世のポイントなどについて、企業人事ならではの視点でブログを書いております。
就活、転職、給与、労務などはそれぞれカテゴリーを設けておりますのでぜひご覧ください。
【筆者について】企業での人事部門を10年以上経験しています。
採用、研修、評価、給与、社保など人事系の実務は網羅。
人事についての経験は僭越ながら豊富でありますよ。
制度設計や企業合併の実務も経験しています。
さて、今回は「メメンタル不調の診断と職場対応の現実」についてです。
以前、別記事「人間関係はメンタルヘルスに直結。その対処法について」を書かせていただきました。
今回は、それと近い話題ではありますが、職場の現実にも触れながらメンタル不調について書いてみたいと思います。
誰にでも起こり得るメンタル不調ですからご参考として役立つ情報があると思います。
メンタル不調は身近にある
社員に関わる様々な問題は各企業ごとに異なる部分もありますが、おそらく共通して昨今多くなったのは、社員のメンタルに関する問題ではないでしょうか。
社員のメンタル、つまり鬱(うつ)とか適応障害など精神的な疾病のことです。
今回の記事では、企業人事の視点から社員のメンタルに関わる本音や現実について書いてみたいと思います。
みなさんはメンタルが不調になった経験はありますか?
または、周囲にそのような同僚がいたことはありますか?
多くの人が比較的身近にメンタルにダメージを負った人がいた経験はあるのではないでしょうか。
メンタル不調の原因ランキングや不調の種類などについては、それに特化した他サイトをご覧いただくのがよいと思いますので、この記事では、メンタル不調の社員が出たときの人事の感じかたや対応を具体的に書いていきます。
メンタル不調者の把握とストレスチェックの関係
まず、メンタル不調社員の把握ですが、人事が社内のメンタル不調者を常に把握しておくのは不可能です。
規模が小さな企業であれば別ですが、一定以上の社員数がいればいちいち社員一人ずつのメンタル面の良し悪しを気にしてなんていられません。
現在は社員数50名以上の企業には年1回のストレスチェックが義務づけられています。ストレスチェックの目的は、社員自身にストレスに対しての気づきを促しセルフケアにつなげたり、企業側が社員のストレス度合いを把握することで職場環境の改善につなげるなどして社員のメンタル不調を未然に防ぐことです。
社員のみなさんは、ストレスチェック結果を人事がつぶさに見て、メンタル疾患やメンタル不調者を見つけ、その社員への対応や支援策を考えているのではないかと思っているかもしれません。
ところが、ストレスチェックは人事でも社員個別の結果がどうだったか、誰が高ストレスだったかまでは把握できない仕組みになっている場合がほとんどです。
ストレスチェックは、前述のとおり企業側の目的は職場環境の改善などですから、個人結果ではなく、全体や組織単位で結果を把握できればいい訳で、不必要なのに個人ごとの結果を知るということは避けた方がよいという内容の制度になっています。
ストレスチェックそのものの詳細は労働安全衛生法に規定されており、本ブログの主旨とは異なるので詳細は割愛しますが、いずれにしても人事がストレスチェックという義務化された制度を運用していてもメンタル不調者の把握には実はイマイチ繋がっていないのです。
メンタル不調者を職場や人事が把握する方法
では、どのように人事が社員のメンタル不調を把握するのか。
次のようなパターンがあります。
人事が社員のメンタル不調を把握する方法
本人からの申告
本人から診断書の提出
上司からの相談
勤務状態(遅刻、早退、欠勤等)からの判明
これらにより把握されたメンタル不調者については、本人や上司へのヒアリングを行い体調面の確認を進めることになります。
その結果、このままだとうつ状態になりそうだとか、出勤出来ない状態になりそうだと判断されれば次のフェーズとして専門家の力を借りることになります。
ここでいう専門家にはいくつか選択肢があります。
専門家の選択肢
産業医
心療内科医
何のために専門家の力を借りるかというと診断書を書いてもらうためです。
ここからが企業人事の本音や現実ですが、メンタル不調の社員が医師から診断書をもらい、それを会社に提出する場合、受け取る会社の立場としては、メリットとデメリットがあります。
メリット:社員を休ませる根拠が明確
デメリット:診断書が提出されたらその内容に従う(長期の療養を要するという内容であっても従う)
メリット、デメリットありながらもとにかく会社や人事の勝手な判断により社員に療養の指示を出したり、療養期間を決めたりしないことが重要なので、やはり医師の診断書は重要です。
なぜなら、もし人事や会社が健康面の事を勝手に判断して何かがあったとき、その責任を負うリスクを回避出来ないからです。
つまり体調についての専門家でもない所属先の上司や人事が判断した内容で療養させ、その後ますます悪化したり、長期間休む結果になったり、退職にいたったり、もっと最悪のケースにいたったりした場合、誰がどういう理屈でその指示を出したのかという責任問題に発展するおそれがあるわけです。
一方、専門家に書いてもらった診断書を根拠にそのとおりな療養をさせて、治ればよし、治らなくても再度診断書の発行という形で医師に支持を仰ぎながら外部に根拠をしっかり持って対応しておけば、仮に何かあった際、会社の対応については理由や根拠がしっかりしている訳です。
つまり、メンタル不調社員への対応は、会社のリスク回避の観点からしっかり考えておく必要があるというのが人事の本音です。
社員の健康 VS 会社のリスク回避
本来であれば、「社員の体調回復がとにかく最優先事項で、メンタルが回復するまで寄り添いながら健康状態を適宜管理していくべき」とか書きたいのですが、それは建前に過ぎません。
社員の健康が重要でないとは決して言いません。しかし、現実として全社員が常に元気一杯な訳はなく、外傷などの分かりやすい疾病とは異なるメンタル不調について回復するまで一件ずつ丁寧に伴走していくというのは理想論です。
人事にも日常的に様々な業務があり、これらメンタル不調の回復だけに注力する訳にはいかないのです。
メンタル不調者への対応は、専門家の指示や意見を仰ぎながら進めるべし。
その理由は、もし何かあったときの根拠が明確であり、企業としてのリスク回避の観点からも上司や人事が療養の期間や内容を決めない方がいいからです。
そういう訳で、人事はメンタル不調者が社内で把握された場合、「会社のリスクを回避」という意識が働きます。
社員の体調、健康を最優先すべきと思うかもしれませんが、これが企業の人事の本音や現実です。
ただ、誤解のないように補足しますと決して社員の体調や健康を軽んじているということではありませんので。
なかなかみなさんが考える理想論どおりにはいかないのが人事の現場であります。
かっこつけて良いことだけ書こうと思えばそれも出来るのですが、企業人事の現場は多くの社員との関りがありますので実際は綺麗ごとでは済みません。社員の健康は大切です。様々なストレスによりメンタル不調にいたる社員もおり、ご本人は大変苦しい思いをしている場合だってあります。人事は決して無視はしません。やれる範囲で一生懸命支援はします。それもとても大切な業務です。しかし、それだけが業務ではないのも事実というのがつらいところ。筆者も毎月特定のやり方で一生懸命メンタル不調の方のサポートをしていますが、やはり肝心かなめの部分はプロ(医師)に任せるべきだと思いますし、会社は会社の立場で冷静に社員のメンタル不調に接せざるを得ないという現実があるのです。