こんにちは人事の夏沢です!
企業人事が本音と現実を書くことを本旨としている当ブログ。
筆者は企業人事として採用や人材育成、人事制度の構築など総合的に実務を行ってきた人事部門マネジャーです。
今回は、「ガンダム歩行計画と人事」について。
実物大ガンダムの歩行をさせるという壮大なプロジェクトを企業人事の観点で記事にしてみようと思います。
ガンダム歩行計画は究極の夢
横浜で開催中のGUNDAM FACTORY YOKOHAMAに行って来ました。キャッチコピーは「ガンダム横浜で動く」(開期:2020年12月19日~2022年3月31日)。
そう実物ガンダムが歩行する姿を観ることが出来るイベントなのです。
間近で観ることが出来るGUNDAM-DOCKTOWERにも行ってみましたので、今回は実物大ガンダムを歩行させるというプロジェクトを企業人事の視点で書いてみたいと思います。
ガンダム歩行計画とは
まず、今回の実物大ガンダム歩行プロジェクトの概要に触れておきます。
2009年お台場に18mの実物大ガンダムが設置されました。当時はやはり大変話題になりました。筆者も当然観に行きまして、お台場の広場に立つ実物大ガンダムを観て鳥肌ものでした。ハリボテの様なガンダムが直立不動という感じではなく、超リアルで今にも動き出しそうなガンダムがそこにはありました。首が左右に動いたり、胸部から煙が出るくらいの演出はあったと記憶しています。
とてもリアルであったものの当時はそこまで。
その後、GUNDAM GLOBAL CHALLENGEが発足。究極の夢として、実物大ガンダムを動かす事に挑戦するとのことでした。
そして技術、システム、クリエイティブの各分野のプロが集結し、2020年ついにガンダムの歩行が実現。
ガンダムというコンテンツと日本のお家芸ともいえるものづくりを融合させ
「実物大ガンダムの歩行」
という夢の実現に加え、計画の過程を共有することによって未来のテクノロジーの様々な可能性について考えるキッカケを提供するという目的もあるそうです。
「次世代の優れた研究者、技術者を生み出す一助となって欲しい」という願いを込めた世界に類を見ない壮大なプロジェクトなのです。単なるエンターテイメントではなく学術研究、文化教育、観光促進などの側面からも注目を浴びるプロジェクトな訳です。
ガンダム歩行計画を人事の視点で見ると
2019年がガンダム40周年でしたから、いまだに日本を代表するコンテンツであるとともにロボットアニメの金字塔として存在し続けるガンダムが文字通り新たな一歩を踏み出す姿をぜひ観ておきたいと思いました。
ちなみにこれまでガンダムは多くのシリーズを生み出していますが、筆者は1stガンダムを愛しています。
1stガンダムの中で好きなキャラクターはランバ・ラル、好きなモビルスーツはザクレロ、そして最も感心し印象深いのはア・バオア・クー(宇宙要塞)です。ちなみに筆者はガンダムマニアではありません。それでも世代的に1stガンダムについては思い入れがあるのです。
本稿は、GUNDAM FACTORY YOKOHAMAへの訪問記を書くことを目的としていません。
ここからはGUNDAM GLOBAL CHALLENGEにより実現した実物大ガンダム歩行計画を人事の視点で書いて行きたいと思います。
ガンダム歩行計画に誰を参加させるのか?それが重要だ
ガンダム歩行計画には、たくさんの企業や人が関わっています。
スポンサー、メディア、技術提供企業、通信会社、地方自治体など二桁のパートナー企業や組織が名を連ねています。
このガンダム歩行計画に携わることになった関係各社の中では盛り上がったことは想像に難くありません。どう考えてもテンションが上がったと思います。きっと「実物大ガンダムを歩行させる計画があってうちの会社も関わるらしいぜ!」といった具合に。そう、気分はかつての地球連邦軍のモビルスーツ開発だったのではないでしょうか。
しかし、ここからは各社威信に掛けてしっかりとした技術や知識を本プロジェクトに提供せねばという気持ちに切り替わったはずです。一流の技術を有する企業が関わる訳ですから恥をかく訳にはいきません。そしてここで重要になるのは人選です。はたしてこのプロジェクトに自社から誰を参加させるのか?またはどの組織やチームに担当させるのか?
他社との協調、協力を取り付けながら自社をアピールできるような人材、つまり会社を代表するような社員やチームを選ぶべきという議論になったはずです(特にテクニカルパートナー企業は)。
他社との共同プロジェクトの人選をするときの企業人事の本音
ガンダム歩行計画は、プロジェクトであって企業や組織を立ち上げた訳ではありませんから、各社の社員に出向してもらって組織を編成するという形式ではありませんが、産学連携、異業種連携の様相はありますから、きっと慎重な人選(個人でなくてもどの組織やチームを主担当にするか)が各社の人事では検討されたはずです。
本プロジェクトは出向ではありませんが、分かりやすい例として企業間出向でいうと実は人事には本音と現実があります。
社員を出向者として送り出す場合、大別すると2つのパターンがあります。
1 出向先で経験を積んで出向元に戻ってきたときは益々活躍して欲しい
2 出向元に居場所がない、または居なくても支障がないため出向してもらおう
これはあくまでも社員を出向させる際に必ず生じる本音の部分なのですが、つまり自社の社員を他社の環境に送ったり、他社との共同プロジェクトに社員を参加させる場合には、
自社の威信を掛けて参加させる
自社で必要としないから他の環境へ
この2パターンがあるのです。そういう意味ではガンダム歩行計画は、「自社の威信を掛けて参加させる」の一択だったと思います。それがこのガンダム歩行計画のすごい所でもありまして、どこの企業もこのプロジェクトで競争や利益というのを目的としなかったと想像します。この計画のコンセプトは究極の夢として、実物大ガンダムを動かす事に挑戦することですから競争や利益度外視で夢の実現を目指すためにプロが集結するということを意識せねばならなかったはずです。
本来、企業活動には利益がつきものです。しかし、「相手がガンダム歩行計画となれば話は別」となるくらい関係者は面白みを感じたのではないでしょうか。
ガンダムが生み出したのは競争ではなく協力
CGみたいですね。
でも実際に筆者が撮影したガンダム歩行計画のガンダム。CGではなく実物です!
さて、本来であれば様々な企業や人が何事にも協力体制を築くことが出来ればいいのですが、多くの場合そうではありません。
協力どころか日常的には競争が当たり前です。
企業間での競争は当たり前ですが、同じ会社内でも様々な競争や足の引っ張り合いがあると思います。
人事は社員の昇格昇進、配置換えなどに関わりますから社員の希望や期待についての悲喜こもごもを感じながら日常的に仕事をしているものですからガンダムをキッカケに多くの企業や人材が協力を惜しまなかったはずだということを想像すると勝手に胸が熱くなる思いだった訳です。
ガンダム歩行計画が象徴するもの
そういう訳でこのガンダム歩行計画の実物大ガンダムは次のような存在に映りました。
歩行計画のガンダムとは
人と人との協力の象徴
産学連携の象徴
技術の象徴
エンターテイメントの象徴
仕事の成果の象徴
世の中には様々な立像がありますが、筆者にはこの歩行する実物大ガンダムが実に日本らしく、誇らしいものに見えました。
仕事の成果としてもとても分かりやすく、技術や知識を集約することでかつての夢を実現するというのも本来の仕事の目指すべき姿なのではないかとあらためて感じましたし、その背景にある企業や人材の協力に思いを馳せるとなお誇らしく思った次第です。
経済の発展には競争原理は必要ですし、社員間の関係性にも対抗心、ライバル心は必要だと思います。しかし、ごく稀には競争ではなく協業、競合ではなく共闘といった具合に手を取り合って協力し合うことがあっていいと思うのです。
しかし、そんな機会は滅多にありません。だからこそ稀有なキッカケ作りになったガンダム歩行計画が凄いと思うのです。
会社員の仕事は一人では完成させられないからこそ組織やチームで取り組む訳ですが、どうしても足の引っ張り合いが生じたり、人間関係がこじれたり、場合によってはハラスメントといった事態もありながらスッと前には進みません。
ガンダム歩行計画では足を引っ張っている様では文字通り歩行できませんし、人間関係やハラスメントといったどこの企業や人事でも抱える問題に頭を悩ませる暇はなく、技術的な課題や計画実現に集中したはずです。
それが本来の仕事の理想なのかなと思います。