こんにちは人事の夏沢です!
企業人事が本音と現実を書くことを本旨としている当ブログ。
筆者は企業人事として採用や人材育成、人事制度の構築など総合的に実務に携わって来た人事部門マネジャーです。
綺麗ごとや理想論が語られやすい人事界隈なのですが、実務を理解している企業人事の管理職の視点で様々な本音と現実を書いております。
今回の記事は、「人事は現場を知らない?管理部門と現場に生じる溝について」という内容です。
どの会社にも必ず生じる管理部門と現場部門との溝。
お互いにそれぞれの仕事の進め方や業務の内容が異なるため色々な隔たりが生じるのは世の常です。
人事の視点から管理部門と現場部門とに生じる溝についての現実を書いてみたいと思います。
管理部門と現場部門は相容れない関係
多くの企業には、事務系の職種と現場系の職種があると思います。
内容は業種により異なりますが例えば次のような例が挙げられます。
管理部門と現場部門の例
管理部門(経営、企画、総務、財務等)と営業部門
管理部門と技術系部門
管理部門と現場系部門(工事や工場等)
管理部門と接客・サービス系部門
今回の記事では営業部門や技術系部門、接客サービスなどを便宜上「現場系部門」と書かせていただきます。
このブログでは、人事の様々な事柄を書いておりますが人事はいわゆる管理系部門に該当します。
そしてこの管理系部門と現場系部門は、古今東西、相容れない関係である場合が多いのです。
管理部門と現場部門の溝を埋める方法
人事は、常に社員と接している職種であります。
同じ会社の社員でも様々な職種があり、比較的近い内容の職種が多い会社もあれば、同じ会社内でも職種がかなり異なるという場合も
社員のほとんどが同じ職種である場合、すなわちほとんどの社員が同じ勤め方ということになります。
逆に社員間で職種が異なる場合、社員の勤め方が異なることになります。
この「勤め方が異なる」という部分が様々な問題や溝を生む要因となる訳です。
管理部門と現場系部門との差でよく問題になりがちなのは、
手当(現場系職種向けの特別手当)
休日
などがあります。
勤務体系について管理部門が例えば9時から17時半までの勤務で日々安定しているのに対して、現場系部門は早番や遅番があり、早朝帯や深夜帯の勤務があ
つまり「同じ会社の社員なのになぜ私たちだけキツイ勤務体系なんですか」という訳です。
人事の本音としては、回答が2個あります。
1個目は、人事異動によって誰でも管理部門も現場部門もやる可能性があるパターン。その場合は、「長い目で見れば有利不利はないですよ」という回答。
2個目は、管理部門が一定の専門性やその他要件(学歴、資格等)を満たす社員で占められ、他の社員は基本的に現場部門というパターン。その場合ははっきりと働き方、求められる能力、役務の種類が異なるのだから勤務体系も異なるということを説明するしかありません。
ただし、この説明での不納得性は次に書く手当に繋がって行きます。
手当について管理部門が日勤帯の安定的勤務であるのに対して、現場系部門の体力的なつらさやしんどさについてはやはり何らかの納得性が必要になります。
社員に不平不満が生じるとき、最も解決しやすいのは手当等の給与です。
企業の紹介ぺージや採用サイトでは、企業のミッション・ビジョン・バリューとかブランディング、パーパス、みんなが笑顔で働ける会社、みんなが活き活きとした会社、そんな綺麗で輝かしい言葉がよく書かれたり言われたりするのですが、本ブログの別記事でもよく書かせていただいているように会社の社員は子供ではありません。
子供じみた言葉遊びみたいな、ましてや実体として掴みどころのないビジョンとかバリューより、解決手段は実弾として給与や休日というわかりやすさが肝要だというのが筆者の基本的な考えです。
ですので現場系部門につらさやしんどさが認められる場合、それに対する何らかの手当(分かりやすい例だと危険作業手当とかシフト手当とかありますね)が必要で、すでにそれがあるのであれば、「そのつらさに報いるための手当なんだよ」ということを丁寧に説明する必要があります。金額と内容がマッチしているかの問題は残りますが。
休日について現場系部門の体力的なつらさやしんどさについての納得性についての実弾での解決手段として休日があります。
つまり、つらくてしんどいから休みもコンスタントに確保できるよというものです。
日勤勤務であれば時間が安定した勤務であるがゆえに月曜から金曜が勤務、土日祝日休みというのが一般的。
一方、現場系部門であればうまくシフトを編成し、3勤務して休みとか4勤務して休みとか色々な勤め方が可能で、平日を含め休日をしっかりかつこまめに確保出来るというメリットを理解してもらうことが必要です。
それから人事への現場系部門からの要望として必ず挙がるのが人員不足。
つまり、人員を増やせばきついシフト(早朝とか深夜)に自分が入る回数も減るし、業務も分散出来て楽になるんだけどなぁという考え方から来ています。
そして、この現場系部門から来る人員不足はほぼ解消することなく、採っても採っても「完全に充足したからもういらない」という所まで行き着くことはありません。
人員が増加するとその人数に慣れてしまい、まだ足りない気持ちになる、もっと人が居ればもっと楽になる、という具合に要望が尽きることはありません。
ですので、現場系部門からの人員増の要望は鵜呑みにしないというのが人事の本音です。
人事の理屈、現場の理屈
シフト勤務特有の勤務体系により、変な勤務をして問題になるケースもあります。
変な勤務とはつまり規定外の勤務だったり36協定違反となる様な勤務のこと。
管理監督者が労務管理について知識があればそんなことにはなりませんが、正直労務について管理監督者がみんな詳しいなんてことはありませんから、変則的な勤務形態となっている現場系部門ではたまに看過できない勤め方をする社員が出てきたりします。
そうすると人事としては、それを是正したり注意したりと手間が増えます。注意すると「業務上しょうがなかった」みたいなことを言われるのですが、しょうがなくないんですね。
規定外とか特別条項付36協定違反となる勤め方に「しょうがなかった」は理由にならないのです。
こんな具合で人事と現場系部門、もっと広義に言えば管理部門と現場系部門の間にはなかなか埋まらない溝というものがあり、大なり小なりほとんどの企業で管理部門と現場系部門は相容れない間柄な訳です。
人事と現場の溝は、会社員の納得性の本質
働き方改革やテレワークの推奨等により益々複雑化する就業規則や労務管理。
多様な働き方が管理部門にも現場系部門にもマッチする内容になっていれば古今東西に存在してきたこの溝が少しは埋まるかもしれません。
しかし、会社員にとって結局納得性を最も欠く印象が強いのって
給与の多い少ない
休日の多い少ない
勤務時間の長短
業務量の多い少ない
これらのことに勝るものはないんですね。
そうするとこれらの要素に同じ会社内で少しでも差が生じていれば、その時点で少なからず溝は生まれておりまして、全部署、全社員が全く平等なんて無理な訳ですから、会社が組織である限り、そして組織が多様である限り、管理部門と現場系部門は相容れない間柄でありまして、当然人事と現場にも溝が生まれる訳であります。
願わくばその溝をなくすために動きたいと思っていますが、それはまさにこのブログの本旨である人事の本音や現実から考えますとこの溝を完全に埋めてフルフラットの摩擦ゼロ状態にするのは無理なのであります。
これは諦めではありません。人事の現場の現実でありまして、綺麗な言葉で理想だけを書いても役には立たないと考えていますのでご参考としての記事でした。