こんにちは人事の夏沢です!
企業人事の本音と現実をテーマとしておりまして人事にまつわる様々なことを書かせていただいております。
就活、転職、給与、労務などはそれぞれカテゴリーを設けておりますのでぜひご覧ください。
【筆者について】企業での人事部門を10年以上経験しています。
採用、研修、評価、給与、社保など人事系の実務は網羅。
僭越ながら人事についての経験は豊富であります。
制度設計や企業合併についての人事の実務も経験しています。
さて、今回は「ダイバーシティ」についてです。
この単語も登場した当初は「何のこと?」といった具合だったと思いますが、現在は一般的に使われるまでになりました。
人事界隈では、さらに色々な用語やキーワードが日々登場しており、このブログではそのような新しい単語を企業人事の視点からの感想や本音や現実を書いていきたいのですが、今回は「ダイバーシティ」について。
この記事を読むと普段なかなか知ることのない「企業人事の観点からのダイバーシティの本音と現実」がわかると思います。
ダイバーシティを企業人事の視点で書いてみる
ダイバーシティとは、「多様性」と訳されるそうです。
それ程新しい言葉ではないので聞いたことがある方も多いと思います。
今回はこのわかってるようなわかってないようなダイバーシティについて人事の目線からの本音や現実を書いてみたいと思います。
企業におけるダイバーシティとは、すなわち「多様な人材を活かす」ということを意味しているというのが一般的説明です。
ここでいう「多様な」とは
多様とは?
人種
国籍
性別
年齢
宗教
性的嗜好(LGBT)
働き方
などのこと。
単一的な人の集まりではなく多様な人が集まった方が、環境の変化に迅速かつ柔軟に対応でき、その多様性を活かすことで企業の発展が促されるという考え方です。
ダイバーシティの効果について
このように書いてみると、嘘ではないですね。
様々な角度から自社を見たり、色々な意見が挙がる方が企業として健全な発展が出来る気がします。
このダイバーシティを経営課題とし、ダイバーシティマネジメントなんていう言葉に少し変化させてみたりして「企業の成長の観点からダイバーシティは重要だ」とか書いてあったりもしますが、どれ程の効果があるのでしょうか。
ダイバーシティを推進すること自体は、その目的もそれこそ多様でしょうから否定されるべきものではありません。
しかし、これが経営戦略上の重要課題だという様な主旨で書いてある記事等を読むと共感出来ない部分があります。
ダイバーシティへの取り組みにより市場で有利になったり、競争力が向上するのかについては、その効果測定が事実上困難で、多様性を持った社員が進めた事柄を単一的な社員が集まって進めた場合、如実に差が出るのかというとそうは思いませんし、ごく日常的な業務においては多様性が邪魔する局面だってあるに違いありません。
ダイバーシティを進めないとグローバル社会で生きていけない?
人事の本音を言うと、社員の多様性を敢えて求める様な採用活動や配置は現段階で行っているケースは多くないと思われます。
誤解のない様に補足すると多様性そのものを否定していません。人事の観点で一般企業が多様性にフォーカスする必要性がどの程度あるかと言うと、現実的には最上級の優先課題にはとてもなっていないということです。
人物本位や能力本位で採用した結果、多様性を持つにいたったということであればいいのですが、ダイバーシティマネジメントとかダイバーシティ経営なんていう切り口で「ダイバーシティを進めないとグローバル社会で生き残ることが出来ない!」ということを真に受けてしまうとむしろ従前より弱い組織になってしまったなんていうこともあるのではないかと思います。
ダイバーシティは、多くの人に認知される程、一般的になった概念ではありますが、結果としてダイバーシティの導入により大成功した企業ってすぐに挙げることが出来ますでしょうか。
ググれば成功事例がたくさん出て来ると思いますが、ググらずにダイバーシティの大成功企業がポンポン出てくるでしょうか。
多分、筆者も含め多くの方はそれ程例示が出てこないのではないかと思います。
つまり、概念としては多くの人が理解しつつも、経済活動や企業競争力を分かりやすく向上させる程の効果が発揮されているとは言えないということであります。
ダイバーシティの勘違いについて
今回の記事で書きたかったポイントは、
ダイバーシティの導入=正しい、ではないこと、
ダイバーシティの導入=競争力向上、ではないこと、
ダイバーシティの導入=グローバル社会に対応、ではないこと、
です。
さも概念としては正しいと思われる言葉が一人歩きしてしまい、実は現実的には効果が上がってなかったり、一過性の流行り言葉みたいなものだったりするものが、人事の業界には溢れております。
正直、個人的にはダイバーシティもそれに近い印象です。
筆者の周囲にも多様な社員がおり、そういう人達と組織を形成しているからこそ実現出来る業務があることは経験上からよく知っています。
ですから多様性という概念はよく分かります。
ところがそれがダイバーシティなんていう言葉になり、「ダイバーシティの本質とは」みたいに、ついついアカデミックっぽく、かつ本音や現実からかけ離れた理想的な表現をするのが、この業界ではよく見掛けられるなぁと感じます。
まとめ
人や文化や考え方の多様性は必要で、それらが競合したり融合したりするから発展性があるということは重々理解していますし、経験もしています。
本稿で書きたかったのは、一般的な企業におけるダイバーシティの優先度についてです。
ダイバーシティという言葉は定着感がありますが、多様性を競争優位の源泉として活かすための組織や制度にまで昇華できている会社は大変少ないという現実から見て、多くの企業にとってはダイバーシティは大切だとか必要だという理念や方針で止まっており、それをマネジメントや評価や採用の実務にどう活かすのかということまでは落とし込まれていないというのが現実であります。
企業人事の本音としては、多様性を意識した採用はとても重要ですし、特に中長期で見るとそこをしっかり意識して採用し、育成できる組織は競争力が高まる可能性があるとは思います。一方、企業人事の現実としては、「優秀な人材の確保」というミッションに比べて、「多様な人材の確保」は重視されるまでにはいたっていません。キーワードや概念としては出てきても、多様な人材を確保するための採用をどのように展開するかについてはまだまだ各社検討段階でしょう。
いずれこの多様性が競争力や生産性向上という観点で絶対に必要な要件として認知されるまでは、ダイバーシティという概念の理解までというスタンスが続いていくのではないかと思います。
それが企業人事視点でのダイバーシティについての本音と現実であります。