こんにちは人事の夏沢です!
企業人事が本音と現実を書くことを本旨としている当ブログ。
筆者は企業人事として採用や人材育成、人事制度の構築など総合的に実務に携わって来た人事部門マネジャーです。
綺麗ごとや理想論が語られやすい人事界隈なのですが、実務を理解している企業人事の管理職の視点で様々な本音と現実を書いております。
新卒の方で気分が落ち込み元気がないあなたへ。適応障害をご存じですか?
五月病という言葉を聞いたことがありませんか?ゴールデンウィーク後にやる気や活力を失ってしまい無気力状態になるというものです。
年度の初めは大きな環境変化を伴う場合が多いことからストレスを原因とする様々な問題が発生する可能性が多い時期。表現上はたまたま五月業ですが同じような症状は当然いつでも起こり得ます。
今回は、新卒として入社した方の適応障害について人事の視点で本音を書いてみたいと思います。
新卒で入社して、今まさに心がどうも苦しい、やる気が出ない、元気が出ないといった気持ちで本稿をご覧になっているあなたのご参考になればと思います。
なぜ新卒社員の気分は憂鬱になってしまうのか
新卒社員の方にとっては4月は社会人としての一歩を踏み出す節目の月。意気揚々とスタートを切ったと思う一方、どうもいつもの自分と違う。学生の頃は元気に学校にもバイトにも行っていたのに、会社に行く足取りが重い。
なぜか。
一般的に元気がなく沈んでしまった様子を「うつ」と表現することがありますがうつ病であるかどうかは分かりません。
気分障害にも色々な症状や種別がありますので一概にうつとは言えないということです。
筆者は企業人事を長く勤めており、社員から診断書を預かることがあります。その診断書には気分障害系のものも当然あります。しかし、診断書が「うつ病」というものはかなり少ないです。逆に多いのは適応障害という診断です。
新卒社員の方は特に環境の変化が大きかったことによるストレスで心への負担が大きい可能性もありますし、まずはこの適応障害とは何者なのかということを一緒に見てみましょう。
本稿の最後ではその解決方法も見えてくると思います。
適応障害とは
適応障害には定義があります。
WHOによる国政疾病分類で「ストレス原因により引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態」と定義されており厚労省のHPにも記載されています。同様に診断のガイドラインとして記載されているポイントを挙げてみます。
適応障害診断のポイント
通常生活の変化やストレス性の出来事が生じて1カ月以内に発症
ストレスの要因が取り除かれてから6カ月以上症状が持続することはない
日常生活が送れない程、抑うつ気分、不安、心配な気持ちになる
この抑うつ気分(よくうつきぶん)という言葉も実は診断書上でよく出てくる言葉です。
解釈としては、気分が沈む、落ち込む、憂うつ、悲しいといったいわゆる落ち込んだ気分のこと。
前述したポイントから適応障害の特徴は、ストレスに感じる環境や出来事が原因となっているということ、そして想像以上に短期間(1カ月以内)で症状が出る可能性があること、でもその原因を取り除くことが出来れば半年以内に症状は治るというのがポイントです。
新卒の方の適応障害の原因って何でしょうか?
新卒の方が適応障害になる理由とは
適応障害を考えるにあたってはストレスの原因を考える必要があります。
当然人によってストレスに感じる内容や程度が異なるため答えは一つではありませんが、ただ新卒の方が感じる共通のストレスは新社会人としての毎日の中にあります。
新社会人の生活って今までと何が違うのか。
新卒の方だってこれまできっと何度も環境が変化することはあったと思いますし、色々な人間関係やストレスだってあったと思います。
ところが新社会人になったタイミングでこれまでと異なる変化が生じています。
それは会社という組織がこれまで身を置いてきた学校という組織とはかなり異なるということが挙げられます。
会社組織で最初に苦労する点
・社員は友達ではない
・同世代の横のつながりだけでは成り立たない
・先生や保護者が助けてくれない
・成果の出し方が勉強やテストではない
・いじわるな同僚や上司が必ずいる
・誰に相談していいか分からない
・新人のうちは仕事に裁量が少ない
・新人のうちは仕事のペースがつかみずらい(就業時間長い)
つまり、周囲の人は仲良しの友達でもない、正直に相談することが出来る人もいない、学校みたいに決められた教科を決められたコマ数勉強して1日が終わるという物でもない、どのくらいの精度でどのくらいのペースでやればいいのかも定かでない。
一言でいうと自分でペースを作ることが全く出来ないんですよね。これはストレスです。
そんな状態が1週間で終わればいいのですが、長期間にわたり続くのかと思うとやはり気分が滅入る。これが抑うつ状態や適応障害の入り口の一つになります。
ぴったりではないかもしれませんが新卒のあなたにとって心当たりはありませんか?
適応障害の症状がある新卒の方が言い出しづらい時の相談先
適応障害は新卒の方だけでなく誰にでも起こり得るのですが、新卒の方特有の問題として入社後まもなく適応障害の症状が出た場合に誰にどのように相談したらいいか分からないということがあります。
新卒の方が相談しづらい原因
身近な同期を見てみると比較的元気にやっていそうなので相談しづらい
年齢や役職が上の上司にいきなり相談していいのかわからない
新人研修やOJTの最中で本配属になっていないので直属の上司が不明
周囲に相談がしづらいという状況が余計に負のスパイラルになる可能性があります。
ではどのように解決していくのがいいのか。答えは人事に相談して下さい。
あなたの会社の人事にまず相談です。理由を書きます。
人事に相談すべき理由
人事は適応障害を含むメンタルケア対応を心得ている
人事は新卒を大切に思っている
人事は就活の時からあなたを見ている
人事は適性検査結果などからもあなたのパーソナリティを知っている
人事は口が堅い(原則そうでないとダメ)
人事は適応障害で不利益な取り扱いはしない
人事は上司ではないが相談の窓口
どうでしょう。新卒の方が適応障害になった際に最初に相談すべき選択肢として人事は悪くないと思いませんか。
最も重要なポイントについて補足します。
人事は適応障害を含むメンタルケア対応を心得ている
人事が適応障害そのものの治し方に長けている訳ではありません。人事は心療内科医ではないですから。
でも適切なアドバイスの方法は社内で一番知っていると思います。
相談すれば解決策を考えてくれます。真っ当な人事であれば相談に来た新卒の状況を判断し、必要に応じて休職、配置換えなどは検討するかもしれませんが本人がそのような措置を望まなかったり、逆に目立ってしまうようなことがあれば避けるはずです。
そして何よりも専門家への相談を勧めてくると思います。
つまり、最寄りの心療内科やメンタル系医療機関に診てもらうようにアドバイスしてくるはずです。
なぜなら適応障害は疾病であり、医療分野です。おいそれと素人が勝手な判断は出来ないというのが正しい考え方です。専門家である医師にきちんと診てもらう必要があります。
人事は会社がお薦めするメンタル系医療機関や医師を知っているはずなので教えてもらうこともできますし、もちろんご自身で医療機関を選択しても良いです。
そのようなアドバイスも含め人事であれば適応障害の解決のための初動を教えてくれます。
適応障害と診断された場合の相談先としての人事
新卒の適応障害のことを書いて参りましたが、総合的に新卒の方は人事を頼って大丈夫です。
新卒の方が考えている以上に人事は新卒の事を大切に思っています。
本当であれば適応障害になる前に何か異変や違和感があれば人事に相談してもらうのがベターなのですが、さすがにそれはやりづらい人も多いと思います。
でも、ぜひ社内の相談窓口として人事は適切であるということを覚えておいて下さい。
人事に相談した内容は、社内で噂話として広まることはありません。
不利益な取り扱いを受けることも原則ありません。
仮に社内で情報が漏れてしまったり、不利益な取り扱いを受けるようなことがあればこれは待ったく別の問題となり、コンプライアンス上の決定的な問題がある会社ということになります。
新卒で適応障害気味のあなたの相談を人事は待っています。遠慮せずご相談を。
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