こんにちは人事の夏沢です!
企業人事の本音と現実をテーマとしています。
人事にまつわる様々なことを書かせていただいている現職の人事部門マネージャーです。
【筆者について】企業での人事部門を10年以上経験しています。
採用、研修、評価、給与、社保など人事系の実務は網羅しておりまして、僭越ながら人事についての経験は豊富であります。
制度設計や企業合併でも人事の実務を経験しています。
人事担当の中でも人事制度そのものの構築や抜本的な改定に関わることはそう多くはないと思うのですが、筆者は幸いにも大企業の人事制度を抜本的に改定するプロジェクトに最初から最後まで関わったことがあります。
前回の記事で「人事制度を抜本的に改定した時の話」を書かせてもらいました。
今回はその続き、新しい人事制度を運用してみた時の話です。
ワクワクしますか?別にしないですねw
まぁワクワクはいいです。
今回の記事を読むことで「新しくした人事制度を運用する時のポイントや注意すべきこと」が分かると思います。
人事制度は作るよりも運用がホント大事
人事制度の再構築について、別の記事で書きました。
人事制度は作ること以上にそれをきちんと運用していくことが重要だと言われることがよくありますが、実際に人事制度の抜本的な設計や構築に携わった経験を踏まえ筆者もそう思います。
人事制度の構築というのは、企業にとっても社員にとっても基幹システムが変わるようなもので大変重要な出来事になります。
ただ、多くの場合、社内のハレーションが大きなものにならないように、また過去の制度のいい部分はそのまま踏襲したいという思いもあり、だいたいがあまりドラスティックには変わりません。
社員にとって人事制度の変更が過激な変更でなかった場合、新しい人事制度がリリースされた後、どのようなことが起こりやすいかを挙げます。
新人事制度リリース後に起こりやすいこと
給与や等級の建付け等が変わったとしても、支給額に大きな変化がなければ内訳の変化まで気にする社員は少ない
日々の業務に与える影響が少ないので人事制度が変わったことが意識されない
新しい人事制度が理解されていないので従来の制度と同じ認識の社員がしばらくはいる
このような事態になりがちです。
そうしたとき、とても重要になるのはとにかく人事担当者のこだわりとしつこさです。
人事担当は適正運用を死守!例外ダメ
人事担当が新しい人事制度の正しい運用にこだわらなければ、新しい人事制度はほぼ形骸化します。
形骸化するとどうなるか。
最もわかりやすいのは、制度外の社員が生まれるということです。
つまり、新しい人事制度においては存在しない社員が生まれやすいということです。
具体的に例を挙げます。
新人事制度で生じやすい存在
制度上存在しない役職に付ける
等級上存在しない処遇をする
定義した役職や等級の内容にそぐわないのにその役職や等級に据える
昇格の基準に足りない部分があるのに「今回は特別に」などの理由で昇格させる
一つずつ補足していきます。
【制度上存在しない役職に付ける】とは、
「昇進には早いが頑張ってるので認めてあげたい」などの理由により、今いる立場より少し上の役職を作ってしまってそこに付けよう、というパターンです。筆者が言いたいのは、早い昇進が制度上ダメですということではなく、頑張りを認めるのならば、年齢や在職期間などにこだわらず、人事制度で規定する役職や等級に抜擢すべきということです。
多くの企業では、この抜擢というのをやりたがらず、「まだ少し若い」とか「あと1年様子を見よう」になりがちです。一方、適正に処遇するのが遅れると頑張っている社員のモチベーションが保てず、退職にいたるというリスクがあることは、企業側も分かっていますので、抜擢はやりづらいから、つい人事制度に存在しない「今より少し上の役職」とか「今より一段階昇格ではなく半段階だけ上げたい」などの意見が出がちなのです。これをやってしまうと早速人事制度としては形骸化します。例外を作ってはダメです。
ちなみにこのパターンでは、「副~」、「~代理」、「サブ~」、「アシスタント~」、「バイス~」などの呼び名を新たに加える形で後から作られたりします。ぶっちゃけそんな取って付けたような役職に心当たりありませんか?
【等級上存在しない処遇をする】とは、
前述の「等級上存在しない役職に付ける」とリンクしますが、等級上存在しない役職に付ける目的が「今より一段階昇格ではなく半段階だけ上げたい」ということなので処遇つまり役職手当や給与を多少上げたいということになります。本来は人事制度に則って昇格後の役職手当や等級による処遇をすればいい訳ですが、半段階だけしか上げないという役職手当や等級はない訳で、これをやるには結局、人事制度の枠外で特別な手当や給与が発生することになってしまいます。
【定義した役職や等級の内容にそぐわないのにその役職や等級に据える】とは、
役職や等級の定義つまり、この役職とは何をやる立場なのか、この等級とは何ができる社員が位置する等級なのかなどの意味付けや定義を人事制度で決めてある訳ですが、その定義からずれている社員でも結局在職年数や他社員とのバランスなどの曖昧な理由により定義と合致していない社員を役職や等級に配置してしまうパターンです。これをやってしまうと早速人事制度としては形骸化します。例外を作ってはダメです。
【昇格の基準に足りない部分があるのに昇格させる】とは、
昇格基準がある場合、例えば人事評価が一定以上とか営業成績の合格ラインとか様々なパターンがありますが、それらの基準のうち多少足りない部分があっても「今回は特別に」とか、誰か特定の人(役員や上司)の鶴の一声により、基準に満たないのに昇格をさせるパターンです。これも人事制度上は例外であり、例外を作ってはダメです。
人事制度の運用は例外要素との闘い
このように人事制度の例外社員が生まれがちですが、人事制度に例外があってはダメです。
これを防ぐには、人事担当のこだわりとしつこさが必要です。
人事制度は適正な運用のために例外を作る訳にはいかないというのを使命と心得て社内で発生する人事制度に関わる様々な例外要素と闘っていかねばなりません。
その理由は、とにかく人事制度を形骸化させないということに尽きます。
人事制度を形骸化させずに運用していくことが、社員への納得性、妥当性につながっていきます。
短絡的に例外措置で進めてしまわずに、意地でも人事制度の適正な運用にこだわった方が、中長期的には会社や社員にとってもいい結果になると思います。