こんにちは人事の夏沢です!
企業人事の本音と現実をテーマとしています。
人事にまつわる様々なことを書かせていただいている現職の人事部門マネージャーです。
【筆者について】企業での人事部門を10年以上経験しています。
採用、研修、評価、給与、社保など人事系の実務は網羅しておりまして、僭越ながら人事についての経験は豊富であります。
制度設計や企業合併でも人事の実務を経験しています。
さてさて、今回は「企業の組織を開発する人、破壊する人」について書いてみたいと思います。
組織については、多かれ少なかれどこの企業でも構造やルールが改変されることがあり社員として働く方は、これに巻き込まれたことがあると思います。組織開発が、常に良い方向に向かえばいいのですがそうではない場合も結構あります。それでも企業は組織をついいじりたくなってしまう。
なぜか?
今回はそんなお話です。
今回の記事を読むことで「組織開発の舞台裏」の事情の一部が分かると思います。
企業、組織、社員の関係性
企業は組織です。
企業とは、営利を目的として、継続的かつ計画的に製造や販売、サービスなど各種の事業を実施する経済的活動体であります。
組織とは、特定の目的を達成するために役割を与えられた個人や集団で構成された全体のことであります。
それぞれの単語の定義はこんな所としまして、企業は組織で構成されています。
そして組織は人つまり社員で構成されています。
企業には設立された経緯があり、事業活動とともに文化、社風、理念などが醸成されていきます。
企業の組織を破壊したくなってしまう人の登場
長い歴史の企業では、企業そのものの社会的存在意義も確立され、そこで働く社員も自分たちのミッションが何なのかが明確になっています。
一方、浅い歴史の企業もあります。
スタートアップ企業と呼ばれる新たなビジネスモデルを開発したり市場を開拓する段階にある企業などでは、まさにこれから事業活動とともに文化、社風、理念が創られやがて社会的存在意義の確立を目指していくことになります。
そういう訳で、企業は様々です。
しかし、様々な企業の中である時、組織の破壊者が現れます。
これは特定の人や特定のタイミングを指している訳ではないのですが、どの企業にも必ず現れます。組織の破壊者が現れるタイミングは主に以下のとおりです。
組織破壊者登場のタイミング
社長の交代
担当役員の交代
部長の交代
課長レベルであれば企業内の組織構造を変えるまで力が及ばないと思いますので、だいたいは最低でも部長、もしくはそれ以上の役職や権限を持った人が交代になった時、次の様な理由からついつい組織を破壊したくなる感情が出てくる場合があるのです。
組織を破壊したくなる人の共通点
自分ならもっと上手い組織に出来る
自分なら過去の慣習に捕らわれずにやれる
自分なら今までのやり方とは違うことをやれる
自分は柔軟な価値観を持っている
自分のやり方が過去と比べて正しいと信じている
これらの感情は、新任役員や新任部長が、着任直後に感じるものではなく、数ヶ月程度後に感じるという特徴があります。
つまり、新任役員や新任部長が新しい視座で企業を観た時に、ついつい組織の悪い部分や改善余地をいくつか見つけて、その結果が前述の「自分ならできる。自分なら変えられる」シリーズの様な考えに行き着くのです。
これまでに色々な経緯や理由を経て形作られた組織であっても、そんな経緯は露知らず「もっとこうした方が良いと思う」、「こうした方が良くなるはず」という短絡的な思いで組織を変えたくなる人が出来上がるのです。しかもこの人は組織開発を担当部門に指示できる立場の人。組織が改善されるのであればとても良いことです。しかし往々にして組織について浅い理解の場合が多いというのも組織を破壊したくなってしまう人の特徴です。
企業で組織の破壊が不定期に起こる理由
この「組織を破壊したくなる」パターンは、オーナー企業ではあまり生じません。
社長が交代することが滅多にありませんし、部長レベルが組織構造を抜本的に変える権限を持っていないからで
中小企業では、組織開発や改編を議論する前に日々行うべき事が優先されている傾向がありますのでやはり組織を破壊したくなる人の登場頻度は少ないと言えます。
このパターンがよく当てはまるのは、主に比較的規模の大きい企業です。
このパターンでやっかいなのは、組織改善を提案した役員や部長が、実はその企業の組織論をしっかり理解していないことです。現行の組織になったのには理由や理屈がある訳で、それを理解せずに新しさや変革を求め組織改編すると、だいたいの場合は改悪になります。
しかし、現行組織の理由や理屈を一生懸命述べても、前述の「自分ならやれる。自分なら変えられる」シリーズで頭がいっぱいの人には通じません。
人事としては、組織に関わる規程類を含め、誰よりも組織に詳しく、現行組織の長所と短所を理解しています。組織の理由や理屈を理解せずに、いわば組織の素人である人物がついつい「自分の権限や能力があれば組織を、いや会社を良くすることが出来る!」という思い込みにより組織の改悪にひた走るということが起こった時に、組織論を語ることが出来る人事がどのように対応していくかが肝になります。
企業の組織の破壊と再構築が改悪になる場合
人事の立場としては、これに抗ったり、戦ったり。
本当に改善になると思うものもあるので、その時は全力で導入を進めたり。
しかし、本稿で書いてきた理由(現行組織になっている経緯を薄くしか理解していないが、新任役員や新任部長が組織を変えたくなってしまうパターン)による場合は、だいたい改悪です。
組織を改善するにはそのための準備が絶対に必要です。
組織を変えるのはそのための目的があるからです。
そしてその目的の難しさや大きさにより、組織改編の内容も変わります。
組織の改編には社員が巻き込まれます。必要に応じて人件費にも影響します。
新任役員や新任部長の思い付きや思い込みに近い組織改編は組織破壊です。
破壊された組織は建て直すのに時間と金が掛かります。
組織を破壊したい人と人事の戦いは続く
それでも多くの企業で必ずや不定期に出現するこの組織の破壊者。
今後も根絶は難しいですが、人事の担当としては単純かつ純粋に企業や社員のために良い組織作りをしたいと思っているので、破壊者が出現すれば戦い、時に勝ったり、時に負けたりしながら、社員のみなさんから見ればある意味拠り所でもある組織について、水面下では今回書いた様な様々な攻防が行われたりしています。
格好つけるつもりはないのですが、組織は重要です。時には組織で動くこと、職制やラインがあることにより動きが遅くなったり邪魔になることもあるとは思います。それでも他人同士の集まりである企業においては目的や理屈や理由により統制を効かせることが出来るための体系、つまり組織が必要です。組織論も進化しており、例えばティール組織とか新しい概念もありますが、いずれにしても組織を改編することはとても難しく、かつ重要なことです。
不定期ではあるもののどこの企業にも必ず出現する組織の破壊者としっかり戦うことが出来る人事が必要ですし、逆に人事であれば自社の組織を整えたり、守ったりすることに労を惜しまないというスタンスが社員への貢献になるということを意識しておきたいところです。当然自戒も含みます!