こんにちは人事の夏沢です!
企業人事の本音と現実をテーマとしています。
【筆者について】企業での人事部門を10年以上経験しています。
採用、研修、評価、給与、社保など人事系の実務は網羅。
僭越ながら人事についての経験は豊富でありますよ。
制度設計や企業合併の人事の実務も経験しています。
さて、今回の記事では
自分で理想としているキャリアパスがある
この会社であればきっとこんな経験ができる
今の経験を活かして早くキャリアアップがしたい
会社で働く人であれば多かれ少なかれ希望や期待として持っている将来の働き方に対する感情。
働く内容やポジションについてはみんなそれぞれ希望や目標を持っています。
この記事を読むと企業人事の視点から見た「キャリアパスについての本音と現実」が分かると思います。
企業の人事が考える人員配置上の本音が分かるとキャリアパスについての実態が分かり、参考になる部分がきっとあると思います。
キャリアパスの現実
キャリアパスという言葉に明確な定義がある訳ではないのですが、企業の中で特定の職務や役職に就くために必要な道筋や計画、経験、スキルなどを得ていく工程を意味しています。
本記事では一つの企業の中でのキャリアパス、つまり特定の職務や役職に就くための道筋の決まり方について、企業の人事はどのように考え、どのように決定しているものなのかその実態と現実を書いて参ります。
仕事って自分がやりたいことが必ず出来る訳ではないよ
企業での仕事って、自分がやりたいことが必ず出来る訳ではないですよね。適正の有無とかジョブローテーションとかそんな要素でなかなか希望の職種やポジションに就くことが出来ないと感じている人も多いのではないでしょうか。
キャリアパスが制度化、ルール化されている企業もありますが、せいぜい
〇年おきにジョブローテーションを行う
特定の役職に就くまでに何個の部署を経験させる
特定の年齢までに現場を経験させる
というくらいまでだと思います。
人事担当の多くは、なかなかそれ以上明確にキャリアの道筋をあらかじめ決めるのは困難であると考えています。
なぜなら未経験の職種や担当についての向き不向きは、結局やらせてみないとわからないという結論に落ち着くからです。
人事としてはやらせてみてダメだったら別のことをさせられるという逃げ道を確保しておきたいのも本音です。
人員配置上にある本音と建て前
人事の配置には本音と建て前があります。
まず、建前の部分は次のようなことがすぐに語られます。
配置についての建て前
全社員に平等に機会やチャンスが与えられるべき
人材育成の過程で適正を見極めて適材適所の配置をする
様々な部署を経験させ、適正を見極めながら個人の成長に繋げる
やる気や能力がある社員がいればどんどんチャレンジさせたい
一見正論ですが、同時にこんなものは理想論であって人事の現場は綺麗事ばかりで成り立つ訳ありません。
人の配置を決める際、当然テキトーにやる訳にはいかないですが、決定にいたるまでには平等でない部分、合理的でない部分、時には理不尽ともいえる部分を抱えながら決まっていきます。
そういう訳で、人事の配置の本音の部分は次のようなことが挙げられます。
配置についての本音
採用時の成績が特に良い→主要な部署や担当の候補として目を付けられている
職務遂行能力を高く評価されている→忙しいまたは難易度の高い部署や担当の候補となる
取扱いが面倒な人物として認識されている→閑職の候補。主要な部署や担当からは遠ざける
能力は高くないが性格やキャラ的に可愛がられるタイプ→自分の下に置きたいという上司が現れるので、その人の下か近くに配置され、能力は高くなくても花形部署や担当として配置される
頭が賢く成績優秀、でも対人接触やチームプレーに難あり→頭を使うポジションをグルグル担当させる。積極的に昇格はさせない。(頭が良い人や仕事が出来る人が出世する訳ではないという内容の記事を別で書きます)
,その他大勢→平等っぽい感じで、可能な範囲でローテーションさせる。その中で何かのキッカケを掴み、適正が見出されればそれを活かせる配置をする
ちなみに最後に出てきたその他大勢が圧倒的なシェアとなるため、会社に対して何の特徴や能力も示せていない場合、理想的なキャリアパスなんていうものは提供されません。
一方、前述のとおり会社の中での配置や出世というのは頭が良い人や仕事が出来る人だけが優先されるものではありません。
性格、キャラクター、相性、協調性という部分がキッカケとなって人事異動や昇格昇進の対象となる場合もあります。
キャリアパスを自分で描けるケースは稀
まとめると、
キャリアパスは、制度というより様々な理由が絡み合った結果論。
組織で動いている限り、ひとりひとりに合った成長機会を平等に与えるのは不可能です。
その他大勢に埋没してしまうとチャンスは回って来づらいので、些細なことでもキッカケとして活かすことを意識しておくと良いです。人を異動させるには理由や理屈が必要です。その他大勢のど真ん中にいる人に理由や理屈をくっつけるのは難しいです。悲観する必要はなく、希望する部署や担当に就くためのキッカケ作りや「知らせる」を意識してみて下さい。その他大勢からほんの半歩だけでも突出することが、結果として異動の候補に挙がることになり、結果論としてのキャリアパスを形成することになります。
全社員のキャリアパスをそれぞれの社員が自ら描き、そのとおりに進むことが出来るようにしてしまうと組織は成り立ちません。
嫌なことをやらねばならないポジションもあるし、嫌われ者の役回りを担わなくてはいけない役割もあります。逆に華やかで人気の部署もあるでしょう。誰でも華やかで人気の部署を選びたいでしょう。
人員配置のポリシーを確認するのがオススメ
つまり、キャリアパスというのはほとんどの会社員にとって自分で描くことは出来ないということです。
会社員の将来的な配置上の道筋は、一方的に会社に決められるとまでは言いませんが、多くの場合、そして特に企業規模が大きくなるほど一社員の希望通りには進みません。昨今は、モチベーションやエンゲージメントという側面から会社側の歩み寄りが以前に比べてありはしますが、「キャリアパスを描く」という表現は正しくなく、主語は会社であって「この会社は、社員のキャリアパスをどう描く会社なのか」が重要なのであります。自身の所属する会社の人員配置上のポリシーを改めて確認してみるとこの会社で将来にわたり生きていくのか、途中で別の道に進むのかを考えるキッカケのひとつになると思います。
「古い考え方だ」とか「自分で働き方を選べる時代だ」という意見が挙がるのは承知していますが、企業人事の視点で現実を書こうとした場合、ほとんどの企業では社員個人が自分の意思と希望通りにキャリアを決定していくことはできないと書かざるを得ないのです。ジョブ型や職務等級制度といわれる人事制度を敷く企業も増加傾向にありまして、これらの制度では社員が主体的に職務を選択しやすいですが、正直国内ではまだまだ少数派の制度でこれが主流となって長く定着するかは現状では未知数です。
組織には組織の現実がある
筆者もキャリアパスを自分で描くことが出来ないということがいいこととは全く思っていません。
やりたいことや希望を持って入社した会社や合流した組織において自分の希望が叶わないということは幸せとはいえません。
しかし、組織は人の集まりです。仮に人が10人でも集まった時点で、すでに希望通りにいかない何かは生じているはずです。
会社は組織。しかも友達同士の集まりではありません。
同じ会社の社員である限り、目標は同じである人が集まっているかもしれませんが目標達成までの手段や考え方や進め方は人によって異なるはずで、10名いれば真逆の考え方をする人もいれば敵対する人も出てくるかもしれません。
ましてやこれが大規模な組織になれば個人ごとの希望や期待は簡単に裏切られてしまう。いいことではありませんが、組織においては現実に起こることです。そんな組織と人事にかかわる現実を書きました。ご参考にされて下さい。
ちなみにこれを回避したり少しでも好転させるための手法や考え方についてはまた別の記事にて。