こんにちは人事の夏沢です。
企業人事の本音と現実をテーマとしています。
筆者について
企業での人事部門を10年以上経験しています。
採用、研修、評価、給与、社保など人事系の実務は網羅しています。
人事についての経験は豊富です。
制度設計や企業合併に係る人事の実務を経験しています。
今回は、実務を通じた経験談から新入社員研修の本音についてを書いてみます。
どこの企業でも新入社員を迎え入れた後には、新入社員用の研修カリキュラムがあります。この記事を読むと「新入社員研修に意図されている企業人事側の本音と現実」が分かると思います。
新入社員研修の内容と期間で企業側の本音や意図が分かる
毎年新入社員の入社があります。
4月の一括採用というのは、日本独特の物らしいです。しかし、今後、新卒採用も通年採用となることが既定路線になっているので、採用選考や入社時期というのも現在とは違うものになっていくでしょう。
それと併せて新入社員研修の時期ややり方も変化があることと思いますが、本記事では、4月一括の新卒入社が行われている現時点においての新入社員研修について書いていきます。
と言いましても、
新入社員研修の内容ややり方を書くつもりはありません。新入社員研修の内容は各社異なる部分もありますので、このブログでは企業が実施する新入社員研修の本音や現実について書いて行きます。
新入社員研修を企画、計画する側の人、新入社員研修を受ける側の人の両方にとって、ご参考になればと思います。
新入社員研修は、学生が社会人になるための基本的なビジネスマナーなどを学んだり、業界や自社の歴史を学んだり、業務の基礎を習得したりといった内容が主です。
通常、4月の入社式直後にスタートしますが、本記事で書きたいのはその期間により企業側の本音、経営方針、求られる働き方までもが新入社員研修の実施内容と期間等を見ることで実は分かってしまうということなのです。
これから新入社員研修を受ける人はもちろん、自分が受けた新入社員研修を振り返りぜひ参考にされて下さい。
新入社員研修の実施期間に見る特徴(3つ)
新入社員研修の実施期間による特徴を3つに分けて書いていきます。
また、本記事での新入社員研修は、OJT期間は含みません。OJTはトレーニングと言いながら中身は実務である場合がほとんどなのでそれは除きます。
特徴ごとに分ける実施期間
1.実施期間が数日~2週間程度
2.実施期間が1ヵ月程度
3.実施期間が3ヵ月以上
1.新入社員研修の実施期間が数日から2週間程度(OJT除く)
現場業務や営業部門があり、慢性的な人材不足がある企業の場合、新入社員と言えどもとにかく人手としての投入が期待されています。つまり、各部門の本音としては「研修なんてどうでもいいから早く新人をよこしてくれ」といった状態であります。
このパターンでは、多くの場合、新入社員は配属後実務の説明を懇切丁寧に先輩社員から手ほどきを受けるというものとはほど遠い、説明は最小限だがとにかくやって覚えろ、見て覚えろの形式になります。そしてこのパターンの場合、業務そのものも比較的単純な業務、在職年数や経験による生産性の向上は比較的少ない職種で見られる特徴です。
新入社員の方で自社の新入社員研修がこのパターンであった場合、業務内容が比較的単純、単調である可能性が高いと思って下さい。
最初からそれを知った上で就職していれば問題ありません。逆に業務内容への期待、応用要素、自分ならではの工夫や改善をやっていきたいという思いで就職していた場合、その期待に答えられる可能性は低いです。
2.新入社員研修の実務期間が1ヵ月程度(OJT除く)
新入社員研修としては最低このくらいの期間があるといいなと思う期間です。
ビジネスマナーや最低限の基礎的な研修に加えて、業界や自社のことを学ぶ研修、特定の知識を習得する研修も入ってくると、このくらいの期間は必要になってきます。
逆に1ヵ月未満の場合は、その企業は「1ヵ月もかけて学ばせる程のネタがありません」と言っているのと一緒です。
1ヵ月程度の新入社員研修を実施する企業の場合、その後のOJTも基礎的な業務からしっかり先輩社員が教えてくれて少しずつ業務を習得していくことが出来る環境である可能性が高いです。
さらに1ヵ月を超えて2ヵ月程度の期間を新人研修に当てられる企業であれば、新入社員の配属後のキャリア形成の仕方や昇格の仕方まできちんと制度化されている組織である可能性が高くなります。
OJTを除き2ヵ月程度の新入社員研修を実施できる企業は、それなりに新入社員に学ばせる事項、習得させたい事項がある、または学ばせる準備をしっかり整えているということであり、配置される側の組織も新入社員を自分達が教育し、指導していくべき存在として認識しています。
このパターンの企業に就職した場合、まずはしっかりとした制度が整備されている組織であるという安心感は持っていいと思いますので、与えられたカリキュラムを頑張ってやっていこうという気持ちで取り組んでいけば充分です。
3.新入社員研修の実施期間が3ヵ月以上(OJT除く)
3ヵ月以上の新人社員研修を実施する場合、その中身は多岐に渡ります。
ビジネスマナーに始まり、座学の研修、外部講師だけでなく社内講師による講習、自社の外で実施する体験型の研修、一定期間を設けて課題を課せられたり成果物を求められたりする研修、地方の拠点やグループ企業を見学したりヒアリングしたりする実地研修などが入ってくるはずです。
このパターンは、大企業に多いです。
新入社員研修に3ヵ月以上かけられる企業の場合、人員不足の補充のために新卒採用をしていません。
あくまでも組織構成上、毎年一定数を確保し、また学力や社員レベルを一定に保つために新卒採用を行っている企業です。
このパターンでは新卒入社後しばらくは「金の卵」であり、しっかり一人立ち出来るポテンシャルを持った人材であるという前提があるのでしっかり、じっくり自社の環境で育てられていきます。
ほっておいても学べる人材であるので3ヵ月という期間をダラダラ過ごしていることはなくこの学びの期間を経て、各配置先でもしっかりとした教育と指導が行われていきます。
これくらいの期間の新入社員研修が実施される企業では人事制度は相当しっかりしています。
なぜなら3ヵ月以上の新入社員研修を実施するには、それを企画、実施するためのチームがあり、そのチームはいわゆる「研修担当」であり、1年中社員研修のことばかりを考えている人達です。
そういった担当を置くくらいの規模観や組織である訳ですから、人事制度のみならず組織も含めしっかりとした企業である可能性がかなり高いです。
新入社員として入社した人であれば、まずは安心してよいでしょう。
そういう訳で、新入社員研修の実施期間による企業の特徴を書いてみました。新卒として入社した人は、自分が受けた新入社員研修と入社時に持っていた企業イメージに乖離がないか考えて見てください。
新入社員研修に本当に期待していることとは
この記事のまとめとして長年研修計画も担当していた企業人事の視点で新入社員研修の本音と現実を書いてみます。
まず、会社が期待する新入社員研修の効果ですが本当の意味での知識の向上とか技術の習得は期待していません。
正直、先月まで学生だった人材を迎え入れるにあたっての一連の行事に過ぎません。また、外部講師に研修を依頼するケースも多いですが、その外部講師への期待度も高いものではありません(もちろん大変上手な外部講師もおられます)。
そもそも外部講師の場合、特定の企業向けにカスタマイズした内容の研修をやるのは限界があります。だいたいが一般的な内容にならざるを得ず、「効果てき面、即効性があり、今まで聞いたことも見たこともない様な驚きと感動があった」なんていう研修はありません。
研修会社の多くは、カスタマイズ出来ます、効果抜群です、効果測定します、事後フォローします、研修知識の定着化を図ります、とか必ず言いますがこれらのことはウソとまでは言いませんが特段効果的とまでは言えるものではないです。
新入社員研修において、外部講師による一般的な研修に比べ、社内講師や先輩社員による研修や勉強会の様な形式の物は、後々あらためて知る機会が少ない内容のものであるケースがあるので、こちらは新入社員ならではの特典としてよく聞いておくことをお勧めします。
また、新入社員研修にはとても大切な意義があります。
それは、同期の横のつながりを強くするということです。
数週間から数ヵ月という限られた期間ですが、新社会人として同時にスタートを切った同級生と共に過ごす時間は、同期のコミュニケーションを促進し、仲間意識を高め、結束を強くします。
同期のつながりや仲間意識は、新卒入社の特典であり、良い部分も結構あるものです。会社としては、その同期の連携がエンゲージメント(帰属意識)や定着化につながることを期待しています。
そういう訳で、
新入社員研修の実施期間や内容により、企業の考え方や社員に求める働き方まで分かってしまったり、企業側は「研修で学ばせる」以外の効果を期待していたりすることがお分かりいただけたと思います。ご参考にされて下さい。